38話

「-であるからして、70年前の昔、全ソレール系宇宙戦争が勃発ぼっぱつし、ジュピター星とはじめとする各惑星が制圧されました」


 今日は僕がソーラー学園で初めての授業だ。

 最初の一時間目の授業、社会科のソレールの歴史だ。しかも数十年前に起きた戦争だ。


「捕虜になった軍人や警察、反発やボイコットをした民間人を、連邦軍は容赦なく問答無用で拘束されてしまい、裁判なしで処刑されたり、または収容所で強制労働送りにされた」


 レンズに映り込むデジタル式の歴史の教科書を開き、戦争の写真や映像が流れ、文字が黒板に書かれていく。

 今から数十年前の昔、当時のソレール系宇宙で侵略が続いていた。旧・ソーラー連邦は汚職などの悪事を動かし、人権・自由・平等・思想・権利などのを取り締まり、最悪な独裁政権な時代だった。

 数々の惑星をアリス星も含む、侵攻が続けられて、最新兵器を使用する連邦に叶わず、あっけなく占領されてしまった。


「ソーラー連邦に植民化した直後、捕虜達を全員、労働を強いられたり、武器・兵器開発などの研究施設や工場、軍事基地などを建設させられ、何万人以上の犠牲者を出ました」


 フクザワ先生は、黒板に白い文字を記載する。僕は指で動かしながら、電子ノートに写した。

 戦況の中で捕虜たちは、重労働をさせられたり、逃亡を図った輩も多かった。再び兵に拘束されて、見せしめの為に銃殺されたり、捕らえた状態で拷問を受けたりする人間も、今もなっても数少なくない。


「それと、戦時中で両親も失ったは、連邦に人身売買されたり、敵対する革命軍に保護されて、様々な軍事訓練を整えて、子供達などで活躍しました」


 僕と出会ったお師匠様も、戦火に巻き込まれて親を失い、解放軍に拾われてその兵隊さんたちに訓練したおかげで、自由を取り戻す為、敵である連邦軍と戦った。

 よくお師匠様に、自分の体験した昔話を聞かされたよ。


「月面の本拠地まで制圧し、無事に戦争が終結しました。何故だかわかる……」


 フクザワ先生は妙な説明を話した。連邦の本拠地である月面基地に突入し、総帥を討ち取って制圧に成功した。無事に戦争が終結し、自由を取り戻せた。

 最後に戦争を終わらせた原因で、なぞなぞのように説明し、周囲にいる生徒は、考えるように集中した。


「みなさんが身に着けているものですよ」

「身に着けているもの?」


 ……体に身に着けているものは何が、そうか……わかったぞ!


「正解は……ソーラー・グラスです!」

(やっぱり)


 連邦を打倒出来たのは……僕らが掛けている眼鏡型端末兵器……ソーラー・グラスである。亡命したプルート星人が発明し、それを掛けた人間は、武器が具現化したり、特殊な能力が発動する。戦車や戦闘機などの最新兵器を簡単に破壊出来たり、そのおかげで連邦の基地や収容所を襲撃、数々の人質や捕虜達を解放することが出来た。


「それにソーラー・グラスを発明者であるプルート星人の名前を……オオウチ君! 答えて」

「僕ですか!?」


 いきなり僕に向けて指を刺した。

 プルート星人の科学者の名前なんて知らないよ。


「それは……その……」

「オオウチ君?」


 考える中、答えは何もわからない。無理心中に僕は声を出した。


「わかりません」


 プルート星人科学者の名前が知らないので、正直に答えた。真面目に授業をしていたのに、クラスの連中は笑い声を上げた。


「そう……正解です」

「はい?」


 今……フクザワ先生が話したセリフは……『正解』って言ったよな。クラスメイトは突然、沈黙をするように黙ってしまう。


「先生……」

「発明者の名前は不明です」

「「「「「「ええええええええーーーーーー!!!!!!」」」」」」


 クラスメイト達は全員、目玉が飛び込むほど、大声を上げて仰天した。

 ソーラー・グラスの発明した科学者の人物の名前が知らないとは、それで生徒達は驚いたに違いない。


「それに名前だけではありません。プルート星人は表向きですけど、種族と出身惑星は一切不明です」

「マジか……」


 プルート星人という種族じゃないのか、歴史ではちゃんと書かれていたのに、まさか真っ赤な嘘を伝えているのか、そんな正直に話したら、確実に極秘関係を説明してもいいのかフクザワ先生!


「先生!」

「なんですかオオウチ君?」

「正直に言うと殺されます」


 僕は我慢の限界で、ペラペラと話す先生に、手を上げて抗議するように口答えをした。


「そんなに怖い顔をしないで、ソーラー学園は特別だから」

「ですが、部外者が家族に話したら……大変ですよ」


 ソーラー学園の学生の誰かが、外出中に前の友人と出会った場合、その秘密を話してしまう。


「もしもの時は、タダのデマと冗談話だと、信じないかもしれません」

「大丈夫なのか?」

「おそらく信じる部外者の場合……その時には……」

「その時には?」

「その学生が話しているところを盗聴して、ブザーが鳴って、学園はその人物を探って、見つかり次第に拘束、その人を脳内の記憶を探り、記憶消去装置きおくしょうきょそうちで、なかったことにします。その密告した学生は、罰を下されますので、みなさんもご注意を」

「確実に陰謀じゃないですかー!」


 ソーラー学園の授業は滅茶苦茶だ。ソーラー・グラスを発明した人物は正体不明で、気づかれた場合には、その人物を探るどころが、誘拐や拉致になりそうだ。

 確実に陰謀説だよ。抹殺まっさつな血よけな行動はしないなら安心だ。けれど、痛い目に合うのは勘弁してもらいたい。


「話は以上……では、授業に戻ります」

(聞けよ!)


 先生は瞬く間に授業を再開した。それでいいのか……

 隣にいるエリスは、机の席でじっくり授業内容を聞いていた。

 僕はエリスに声をかけた。


「エリス……歴史の授業は好きか?」

「私の好きな教科ですわ」


 あっさりと正直に答えた。エリスは指をいじくるように、教科書の文字を視えるように拡大した。


「なんで好きなんだ?」

「だって、大昔の出来事を調べるのが勉学なのですわ」

「……そうか」


 エリスは物好きだなあ。まるで昔話の絵本と勘違いしている気がする。

 僕も気を引き締めて、歴史を学ばないといけないな。


「では、次にソレール系宇宙の月面について解説します」


 フクザワ先生は、次のページをスライドしてめくった。

 教科書のページをめくると、月面のデジタルピクチャーが二枚載っていた。


「先生、月面には何か?」


 一人の男子が、月面について話しかける。


「そうよ、昔と今の月よ」


 二枚の写真を見比べると、左は数十年前の昔、右は現在で、下の文字が記載されていた。

 昔の写真はミサイルやレーザー砲が設置している月面軍事基地の要塞、現在の写真は宇宙船や宇宙艇の行き来して、スペースコロニーやダイソンスフィアなどの月面都市に変貌へんぼうした。


「ソーラー連邦の本拠地ですね」

「ええ、吉は跡形もなくなくなりました。戦後に解体しました」


 独裁政権を牛耳るソーラー連邦は、戦後間もなく、軍人や戦闘員、その職員を含めて拘束し、アリス星際軍事裁判にかけられ、死刑や終身刑などの実刑判決を下された。


「ところが、ソーラー連邦の親族などの迫害は少なくありません」


 戦後、その連邦の家族は、苦しめられた人間たちに酷い目に合い破滅に追い込まれた。襲撃や略奪などの被害になる人間は少なくない。あのテロリストのアルフレッドもその一人だ。

 アルフレッドの父親が、この町の収容所所長を務めていて、戦後に父親は牢獄送りにされて、自らの人生が台無しにしてしまい、逆恨みの為にテロリストになってしまう。

 戦いが終わって奇跡的に生還した。僕らが脱出した直後、アルフレッドは何者かに殺されてしまい、公安の連中が来て、事情徴収をされる羽目になる。


 キーンコーンカーンコーン


「アラッ? もう予鈴が鳴っているね」


 時計の方向へ見ると、もう一時間目の授業が終了。フクザワ先生はスライドで教科書アプリを閉じた。


「では、一時間目の授業を終わります。起立! 礼!!」

「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」


 全員席に立ち上がり、先生に礼の挨拶した。

 休み時間は、10分くらいで、生徒達は授業を終わって背伸びしたり、両腕を上げてストレッチする生徒もいた。僕は隣にいるエリスの方へ話しかける。


「エリス……よくこんな授業を習えるな」

「ええ、私も初日の授業で驚きましたわ」

「そうか……お前もか」


 これがソーラー学園の授業なのか、本当に大丈夫なのか、無事に卒業と進学できるのか、心から祈りたいよ。


「そういえば、実技の授業は何時間目?」

「三時間目ですわ、四時間目も含めて」

「そう……二時間以上だな」


 二時間目の授業が終わるまでか、僕はもう自分の席に戻ろうとしたら、ダレス達が、自分の席に集まっていた。


「よおヨシノ! まだまだ紹介したい奴らがいるんだ。時間あるか?」


 ダレス……これ以上は勘弁してくれよ。

 























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