地下の先
勢いよく落下した三人だったが、高さはそこまでではなく大した怪我はなかった。
壁には等間隔で炎が灯っており、床には分厚い絨毯が敷かれている。まるでどこかの城の廊下のようだった。
「なんだここは……」
「よかった、明るいし広い」
「リザードさん、ハヤブサ、上を見てくれ、叩き壊した床がもう戻ってる」
勇者は天井を指差した。そこには侵入した形跡はもう残っていなかった。
「わざと破壊して入る造りなのか。そりゃあ、誰もわからないな」
リザードはゆっくりと立ち上がった。
精霊はゆっくりと進んでいく。三人はそれを静かに追った。
「正直なところ、到着する頃には全て終わってる可能性もある。ブラちゃんが大暴れして」
「たしかに」
「そんなに強いのか」
「俺たちが三人で束になっても、目を閉じてる状態で勝てる」
リザードは何も言い返さなかった。何故か三人は、これから対峙する組織ではなく、ブラッドに畏怖を感じながら前進することになった。
「見張りどころか、人の気配すら感じない」
リザードは槍を構えながら呟いた。三人が歩く静かな空気の振動で炎が揺らめく以外に、景色は変わらなかった。
「いつまで続くんだ、この廊下」
ハヤブサは廊下の先を睨みつけている。明かりが灯っているにも関わらず、遥か先へ続く廊下の終わりは見えない。
「ちょっと走ってきてくれないか、ハヤブサ」
勇者の言葉にハヤブサは首を傾げつつも、前方に向かって走り出した。
「リザードさんは動かないでハヤブサの背中を見ててください」
そう言って勇者は後方に向かって走り出した。
先が見えないということは、先がない可能性もある。水路の床を破壊してこの館のような廊下に出たのなら、おかしなことが起きてもおかしくはなかった。
しばらく走ると、勇者の前方に人影が現れる。それは次第に炎によって照らされて行き、リザードだとわかった。リザードはこちらを、つまり、ハヤブサが向かった先を向いている。そして、勇者より早く、ハヤブサがリザードの後方に現れた。
「お互いが走っていったら場所が入れ替わった。ってことは、つまり……輪っかみたいになってるのか」
ハヤブサは鹿爪らしい表情で言った。
「どこかに抜け出す場所があるんだ、例えば、炎に違いとか……」
ハヤブサが言うより早く、リザードが大きな笑い声をあげた。
「とりあえず、やることは一つだな!」
リザードは勢いよく槍を振り回し、床に突き刺した。そしてそのまま槍を押し込んでいく。
「次はどこだ? また水路か?」
リザードが力を込めると、絨毯が燃え上がり、床が崩壊した。
「同じ仕組みかよ、馬鹿なんじゃねぇの!」
体勢を崩したハヤブサが吠えた。勇者も正直同じ感想だった。何の捻りもない仕掛けでは隠れ蓑にはならないのではないか。
しかし、着地した瞬間、三人の目の前には怪物の群れが待ち構えていた。
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