輝きを抜けて
砂塵の王は玉座に腰掛けている。傍らに立つ護衛は、王の扱うであろう大剣を常に差し出せるようにしていた。王であるとともに、戦人であることを見せる王の風格は、目の前に立つ者の足を鉛のように変えた。
「つまり、昨日の攻撃は先代勇者に関係していると?」
三人は砂塵の王に呼び出され、先日の襲撃に対する見解を伝えていた。
「理由は多分私。今話したように、私は強制的に旅から外されているから」
「そのような行いをする者には見えなかったがな……」
砂塵の王は唸った。ドラゴンや勇者を思うのか、ハヤブサもブラッドも口を開かなかった。
「俺たちはこのまま勇者の旅路を辿ります。他にもブラッドのような仲間や、勇者の行動の謎を解く鍵があるかもしれませんから」
勇者が言うと、砂塵の王は頷いた。
「そうだな。……そうだ、昨日の魔法による攻撃、専属の魔法使いに発動した位置を追わせたのだが、まったくわからなかったそうだ。力になれずに申し訳ない」
「いいんです。突き止めたところでそこに向かうには情報が少なすぎる」
「先代の勇者は、ここから精霊の洞窟を目指し、水鏡の国に行った。道筋は、ブラッドがわかっているはずだ」
砂塵の王は念のためと言って地図で場所を教えてくれた。水鏡の国は精霊や魔法に深く関わる国だ。商売の時には、魔力の伴う商品のほとんどが水鏡の国からのものだった。
「ところで、今日の式典は見てくれるのか?」
「駄目よ。同じ位置にずっといれば、また攻撃が来るかもしれないわ。私たちはもう行く」
ブラッドが下を向いたまま答えた。あの一撃の後、再び攻撃が来ることはなかったが、確証があるわけではなかった。
旅支度を終え、勇者らが町の出口に向かっていると、闘技場の方向から賑やかな声が聞こえてきた。式典が始まったのだろう。
「あの団体に感謝だな。どんなに不安で苦しくても、笑えば少しは楽になる」
勇者は言った。町の出口に着くと、闘技場からの声が急に消えた。
「静かね」
「追悼してるんだな」
静かになった闘技場から、大きな大砲の音が聞こえた。弔いのものだ。戦陣を切り抜けた砂塵の王らしい、重々しい大砲の音だった。
勇者は魔法陣から拳銃を取り出すと、威嚇用の空砲に切り替え、ハヤブサに渡した。
「仲良くなった戦友なんだろ」
「ありがとう」
ハヤブサは銃を受け取ると、真上に向けて発砲した。乾いた音が大きな扉の向こうの砂嵐の音に攫われる。
「行こう」
三人は水鏡の国に向かって歩き出した。
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