闘技場での戦い4
勇者が再び、短銃で攻撃する。しかし、弾は当たらなかった。勇者は思わず舌打ちを鳴らした。
「避けられるような武器じゃないんだけど」
ブラッドは速度を上げて接近する。勇者は魔法陣から、拘束魔法の道具を取り出した。魔力がないなら、無効化できるかもしれない。
勇者は、殴りかかるブラッドに拘束魔法を発動する。文字の書かれた札から鎖が飛び出し、ブラッドの体に巻き付いた。
が、ブラッドはその鎖を両腕の力で引きちぎった。観客の歓声が大きくなる。
「真正面からの拘束は、ドラちゃんくらいの魔法じゃないとね」
引きちぎった鎖を弄びながらブラッドは微笑んだ。勇者は次の行動を考えたが、魔力も策も尽きていた。八方塞がりに思わず苦い笑顔になってしまう。これ以上は無駄だ。諦めることも経験の一つだろう。
「負けは素直に認めておくよ、降参だ」
勇者は両手を挙げた。ブラッドは動きを止め、残念そうに微笑んだ。観客たちは女王の復活に歓喜していた。負けを認めて冷静になると、周りの音が良く聞こえるようになる。耳障りな実況の声も聞こえてきた。
「やはり女王は強かったー! 今回は突然の女王復活でしたね! そしてなんと、今回は王様からの言葉がいただけるようです!」
男の声に観客たちはさらに盛り上がった。勇者が痛みによろけると、ブラッドが支えてくれた。
「あそこにいるのが、砂塵の国の王よ」
ブラッドが示した先には、観客席の中でも一際目立つ場所の玉座に腰掛ける男がいた。男は立ち上がると、魔法を使い、闘技場に声を響かせた。
「久々に闘技場の王者の姿を見ることができたことを嬉しく思う。そして、旅を重ね強くなった王者を相手に良く立ち回った。二代目勇者には是非とも魔王を倒してもらいたい」
王の声に観客は立ち上がり勢いよく拍手を始めた。勇者は「すごいな」と呟いた。
「ブラちゃんの人気もすごかったけど、さすが王様だな」
「あの人は魔王の手下たちを自ら前線で迎え撃ったの。文句無しの英雄よ」
「その調子で魔王倒してくれないかな」
「あなたの役目でしょう」
「できるやつがやるべきだと思うんだけどな……悪い、ちょっと寝る」
勇者は、疲労からそのまま意識を失った。
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