第227話「ロミオとジュリエットの恋」
「たった5日間の恋だったのよ!」
小学時代、5、6年生の時の担任の女の先生には……
「ミズキ君、漫画ばっかり読まないで、本を読みなさい、本を!!」
と、よく言われた。
別に、漫画ばっかり読んではいなかったのだが……
「本ばっかり読んでも仕方が無い!」
と、よく先生に立てついていたのだった。
そうそう、この先生には当時、誕生日に本をもらったのを覚えている。コナン・ドイルの「名探偵ホームズ」だったなあ。先生は、生徒が本に興味を持つようにと、よく、いろんな話をしてくれていた。その中で印象に残っているのが……
ロミオとジュリエットの話だった。
「みんなは、ロミオとジュリエットを知ってる?」
と、先生は言った。
ロミオとジュリエットの話は、アニメでもよく出てくるネタだったので、意外とみんな知っていた。(ヤッターマンとかだったかな?)
「ああ、あの周りみんなに反対されて、最後に一緒に死んじゃうやつでしょ?」
と、覚えていた。
「ロミオとジュリエットって、何日くらいの話だか知ってる?」
と、先生が言うと、みんながざわつきだした。
『何日!?……んっ?』
「出会ってから、死ぬまでだから……一ヶ月!」
と、ゴウが言った。
「いや、一年だろ?」
カミが言った。
先生は、みんなに挙手のアンケートを取った。
「はい、3日だと思う人!」
「3日な訳無いじゃん!」
みんなから、声が上がる。
「はい、5日。……3人ね」
僕は、周りを見回した。
イケとミーとあと一人は……誰だったか忘れてしまった。
「はい、一ヶ月。……15人!」
「はい、半年。……20人」
「はい、一年以上!……7人ね」
今にしてみれば、先生にうまく乗せられたなあ~という所だろう。クラスのみんなが、先生の次の言葉に、引き込まれていたのだから。
「正解は……」
みんなが注目する!!
「正解は、一緒に数えて見ましょうね!」
「なんだよお~、早く教えてよ~!」
と、チョボオが叫んでいた。
「ロミオとジュリエットを読むと、日付けは出てこないんだけど、読んでいくと次の日だとか、分かるんだよね。それで、何日かと数えると……」
先生は、黒板に向かい、二人が出会ってからのことを、日を追って書いていった。
「一日目、これは夜ね!宿敵キャピレットの家で、パーティーがあって、そこに、ロミオと仲間が潜り込むの。そこで、キャピレット家の一人娘ジュリエットとロミオは運命の出会いをするのよ」
先生は、『一日目、出会い』と書いた。
「二日目、この夜にロミオは、ジュリエットに会いたくて、また命がけでキャピレット家に潜り込み、会うのよ。この夜に有名なあのセリフ……ロミオなぜあなたはロミオなの?になるのよ」
この話に、クラスの女の子たちは、ポーっとなっていた。二日目は、『告白』だった。
「三日目、ここで牧師が出てくるのよ。ロミオとジュリエットの仲立ちをして秘密の結婚をするの。でもその後、ロミオの友達のマキューシュオと、ジュリエットのいとこが決闘になるの。マキューシュオはロミオの名誉のために死んでいくの。そして、ロミオは……復讐をしてしまうのよ」
決闘の言葉に、クラスの男の子の目の色が変わった。先生は黒板に『三日目、結婚と決闘』と書いた。
「4日目、ロミオは国外追放になるの。そしてジュリエットは、別の人と結婚をさせられそうになるの。そこで、ジュリエットは牧師に頼んむのよ。牧師は二人で逃げられるようにと、仮死状態になる薬をジュリエットに渡すの、これで死んだふりをしておいて、葬儀が終わった後に二人で逃げる手はずだったの。そして牧師は、そのことを伝えるために、国外追放になったロミオに手紙を出すのだけど……」
『四日目、別れ』と先生は黒板に書いた。僕らは、先生の話の虜になっていた。
「5日目……牧師の出した手紙はロミオには届かないの、牧師はあわてて、ロミオに会いにいっわ。でも先に、ロミオの従者がジュリエットが死んだと伝えてしまうの。それを聞いたロミオは、街に戻ってくるの。国外追放だから街は騒然。ロミオは何とか教会に潜り込む。教会に入ったロミオはジュリエットを見つける。本当は、ジュリエットの薬が切れて、このあと二人で国を逃げるはずだったんだけど……死んだと思ったロミオは、ジュリエットがいないこの世界に絶望し…………そして、ロミオは命を絶つのよ。」
カッカッカ
と、チョークが鳴る。先生は黒板に、『五日目……』と書いた。
「ジュリエットが目を覚ますと、ロミオがいるの。でも、死んでいたわ。ジュリエットは、この時にどんな気持ちがしたのでしょうね?最愛の人がこの世からいなくなってしまって……こうして、このあと二人は永遠の眠りについてしまうのよ。だから、ロミオとジュリエットの恋は、たった五日間だったのよ」
先生は、チョークを手に持ったまま止まっていた。五日目のところには、なんて書こうか迷っていたようだった。
「あて、ここはなんて書いたらいいかしらね。……みんななら、なんて書く?」
と、言って先生は『……』のままで、終わりにした。
先生の話を聞いて、僕は……本が読みたくなった!学校が終わったあと図書室に行った。
「ロミオとジュリエットは……」
と、本を探すが、全くなかった!図書の係りの男の先生がいたので聞くと……
「今日さあ、ロミオとジュリエットが大人気で、3冊あった本、全部借りられちゃったよ!」
と、言っていた。
当時は、まあしょうがない残念!で終わってしまっていた、そんな話なのだが、今にして思い出してみると、凄い話だなあと思う。
みんななら、最後の『……』になんて書くのだろうか?
(注)あくまで僕の小学時代の記憶からなので、本当に「ロミオとジュリエット」のお話が、そんな内容なのかは、分かりませんのでご注意を!(笑)
おしまい
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