第21話「リコーダー」

僕の小学時代の話だ。

小学3年生から、音楽の時間にリコーダーを習った。2年までのハーモニカと違い、ちょっとお兄さんな気分になった。それは、上級生のランドセルからのぞく、リコーダーが羨ましく思えていたからだった。


初めて、リコーダーを手にしたときはどうやって音がなるのかが、不思議でならなかった。今なら、共鳴や響く容量による振動差による音階差などと理解出来るが……

なんで孔を押さえると音程が変るのかが良く分からず、その事が面白かった。


そうそうリコーダーで思い出すのが、あの匂いだ。小さな薬ケースみたいなのに入っていた「グリセリン」と書かれてた油。そもそもリコーダーは吹いていると、よだれ臭くなるのに、さらにグリセリンを塗ることで臭さを増したのだった!(ちなみにグリセリンとは、リコーダーの接合部に使う油だ)


まあ、よだれ臭さの原因は使い終わったあとにちゃんとふかないからだが。臭くしないためには、付属のプラスチックの棒にガーゼを巻くヤツで綺麗にし、家に持ち帰ったあと台所洗剤で洗えば、かなり防げる!しかし、そんな事をしたのは始めの一か月だった。


付属の布袋を刀の鞘に見立てて、リコーダーチャンバラもやった!何度もやると、リコーダーの下の部品が吹っ飛んでいった!それが面白くて、何度もタケとチャンバラをした。でもそのうち、タケの部品がどこかへいってしまって……


「なんでタケ君の音はいつもズレてるの!ちゃんと押さえてる?」


と、タケは先生に注意されてしまっていた。タケ本人はちゃんと押さえていたので……


「ドを押してるよお~」


と、ブータレていた。

タケは先生に指摘されるまで、フラットしたシの音を出していたのだった。

授業始めのうちは指使いのプリントが配れ、それを見ながら練習をした。確か、「ファ」の音の鳴らし方が2つあって、ドイツのジャーマン式と英国式だったかと思う。僕は、鳴ればどっちでも同じじゃん!と思っていたのだが、テストに出るので取りあえず覚えるハメになった。

そうそう、タケのリコーダーの話しの続きだが、リコーダーの無くなった部品は取り寄せられ……


下だけが真新しいリコーダーで、タケは今度はちゃんと「ド」の音を出していたのだった。

おしまい


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