第19話「コンクリ工場の話」

僕の小学時代。小学校の裏にあったコンクリート工場の事を……


「生(なま)コンさん」


と、呼んでいた。

道路をはさみ、コンクリートの原料を運ぶダクトが頭の上を走っていた。生コンの脇はすぐに線路になっていて、引き込み線があり石材が運ばれていた。巨大な工場は、まるでラピュタに出てくる建物のようで時々、煙を吐き出していた。


「絶対に工場では遊ばないように!」


と、親や先生から言われていた。

実は、工場の脇に砂を貯めるところがあって、そこはアリ地獄のように、すり鉢になっていた。砂は、そこから工場へ引き込まれ、砕かれてコンクリートになるのだ。


「コンクリ工場の砂山で遊んでて、砂山に飲み込まれコンクリートになった子どもがいるんだよ!」


と、よく婆ちゃんに言われていた。砂山……


『でも、もう登ちゃったんだよな~!!』


小学校に入って、すぐの事。僕とカミとホリの3人で、コンクリ工場の脇の砂山に登っていたのだ。今の時代では考えられないが、敷地には柵などないから簡単に入れたのだ。

砂山に登って遊んでいると……


「こら~!!入っちゃダメだろ!!コンクリになるぞ」


と、黄色いヘルメットをかぶったオジサンにえらく怒られた。だから、 いまさらながらに聞かされた、婆ちゃんからの注意にはちょっと怖くなった。


高学年のときだったか?コンクリートになった子どもの話しを読んだ記憶がある。(授業で読んだ気もする)母親が、息子がコンクリートになってしまい、そのコンクリートがどこへ運ばれたのかを探す話だったと思う。その話しを読みながら、すぐそこにあるコンクリ工場を見ると、さらに物凄く怖く感じたのだった。


おしまい



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る