↓
たしかな
てつづき
がいねん
きんじち
――ルービット・サーチャ
「この解釈に妙なセンスを要する文字列は一体」
「真面目なキョウカ女史には分かりかねるかな」
「名前で呼ばないでください。あなたが目を付けたのだからこれが何か特別な文脈の上にあることは分かりますが」
「やけに褒めてくれるね。んーまあ大したもんじゃないけど、このルービットって詩人が結構な曲者みたいでさ」
「詩人? これは詩なのですか?」
「詩かどうかは個人の見方だな。で、詩人ってのは多分フェイクだよ」
「分かりました、私ではわからないことが存分に。あなたが考えていることを聞かせてください」
旧インターネットのサーチエンジンの仕組みを逆手に取った最初の時間稼ぎだと推測できるんだ、こいつは。
あらゆる解釈装置はシンプルに文章を解釈した。日本語や英語なら左から右に。減少傾向にありながら極僅かに『縦書き』という機構が残っていた日本語は、その意味では一番それに近かったのかもしれない。意味が通る方向を90度ずらした子供だましの二重文章が登場した。
つまり、一見するとただの文章に見える横並びの文字群の一番左端の文字だけを縦に読むと、そこにもまた意味の成立する文字の組み合わせが織り込まれている。無限に増殖を続ける電子空間のテキスト群に隠されたこの類の二重テキストの存在確率は無視できないレベルで増え続けていた。それは解釈装置の対応が間に合うまでに、ある層の疎通網として十分に機能していた。
「たてがき、がルービットのメッセージということですか」
「俺にはそうとしか見えなくなった。なんでヒントをわざわざ作ったんだと思ったが、もう十分に楽しんだってことかな」
「ルービットを追えというのが……次の私への指示ですか?」
「とも思ったんだけど、こいつの名前を宛先に使ってみるといい。今キミが覚えたちょっとした言葉遊びの感覚のままね」
「……これは、一筋縄ではいかないようですね」
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