走馬灯劇

おっさん52%

第1話 娘

私はため息をつくしかなかった。

娘が消えてから、十年の時が過ぎ去ってしまった。

それに気をとられて、仕事のミスは増え続けるばかりだ。

会社では、変な噂ばかり流れて、クビになりそうだった。

「私の娘も死んだのかな」

そんな暗い結末ばかりを、想像してしまい、自分が嫌になっていく。

そして、に気づかないまま、歩いてしまった。

当然、交通量の多いこの交差点では、轢かれること間違いなしだ。

このとき鮮明な記憶が、流れ込んできた。


走馬灯

ショッピングセンターらしきところ。

確かにあの事件の場所。

ここには一回しか来ていない。

娘が五歳の時、あいつは現れた。

明らかに怪しい格好だった。

冬なのに、シャツとパンツの姿。

不審者。

私がトイレに行っている間に、娘の目の前に現れた。

すぐに警備員が、不審者をつれてしまった。


私は、車に轢かれた。

それでも、そこまでの速さではなかったので、命に別状はなかった。

今はそんなことどうでも良かった。

「あいつは娘が好きだった」

この走馬灯を信じて。

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