第24話『決戦!! ミシェルVSレオン!!』

 二月某日。 遂にこの時がやって来た。

 ユナイテッド魔法学園の第三闘技場にはレオンとミシェルの決闘を聞きつけてやってきた生徒や教員たちが観客席で並んでいた。

「レディース・エンド・ジェントルメン! よくぞこの第三闘技場に駆け付けてくれました! 本日は今年度の魔闘祭小等部制覇したミシェルとレオンの二人による決闘が始まるぞ!」

 歓声が沸き上がる。

「まずは東! ミシェルと唯一同調出来る謎に包まれた漆黒の少年! レオン・スミス!」

 実況の言葉に合わせる様に、東の門からレオンが観客たちに手を振りながらステージに上がる。

 さあ、ミシェル。 お前がどこまで成長したか、試させてもらうぜ!



 西の門で、ミシェルは少し緊張した様子で待機していた。

「よっ! ミシェル!」

 不意に後方から生徒会長のベネットに声を掛けられたのでそちらに振り返ると、他に今まで自分の修行に付き合ってくれたジミー、ギルバート、アルバート、カール、信長に濃姫、そして何故か生徒会役員のフィリップとジョニー、アンナにケイシーがやってきた。

「ようやくこの時が来たな!」とベネットはミシェルの肩を叩いた。

「頑張れ……」と相変わらず渋い声でジミーがエールを送る。

「敗けたら承知しねぇからな!」と絶対勝てと言わんばかりに喝を入れて来るギルバート。

「大丈夫! ミシェルならきっと、ううん。 絶対勝てる!」とアルバートが断言した。

「努力は君を裏切らない」とカールは優しい笑みを浮かべた。

「御武運を!」と上品に一礼する濃姫。

「勝て! お主に伝えるのはそれだけじゃ」と腕を組みながら信長は言った。

「頑張ってください!」と応援するフィリップ。

「応援している」といつもの無愛想な表情で言うジョニー。

「ま、頑張りなさいな」と素直に応援できないアンナ。

「が、ががっ、頑張ってください……」と何故かケイシーが緊張している。

 そんな彼らから勇気を貰ったミシェルは、静かに口角を上げて「ありがとう! 皆、行ってくる!」とステージへと飛び立った。

「西! もう守られるお姫様ではいられない! シンデレラボーイ! ミシェル・ブライトの入場だ!」

 歓声と共に、ミシェルは駆け足でステージに上がり、レオンと向かい合った。

「ようやくこの時がやってきたな?」と微笑むレオンにミシェルは口端を上げながら小さく首を縦に振った。

「勝ち負けなんて関係ない。 お互いの総てをぶつけよう」

 そして、とレオンはどこか懇願するような表情を浮かべながら言葉を続けた。

「もう二度と俺から離れないでくれ……!」

 彼の切なる思いにミシェルはズキッ! と胸が痛んだ。

 そこまで寂しかったのか……。 彼には悪い事をしたな……。

 自分がしでかした行いに改めて悪気を感じるミシェルはそんなパートナーを慈しむかの様な優しい笑みを浮かべて「解った。 もう離れないから」と答えた。

「二人とも、準備は良いですか?」

 審判の確認に、二人は首を縦に振る。

 それにより、審判は右手を前に差し出した。

「これよりレオン・スミス、ミシェル・ブライトの試合を開始する」

 その言葉と同時に、観客席は一斉に静まり返り、レオンとミシェルは戦闘に入る構えを取った。

 ドクンッ……! ドクンッ……!

 二人の緊張が会場全体に行き渡る。

 これからレオンとミシェルの戦いが始まる……。

 静寂に包まれる中、ゆったりとした冷たい風がレオンとミシェルの頬を優しく撫でた。

「始め!」

 右腕を振り上げる審判の戦闘開始の合図と共に、二人はほぼ同時に魔法を唱えた。

「ホーリー・バレット!」

「ダーク・バレット!」

 二人の指先から放たれる無数の白と黒の弾丸がぶつかり合い、爆煙が巻き起こる。

「何だ!? 二人ともいきなり中級魔法を放ったのか!?」と観客席で驚愕するジョニーに「馬鹿野郎! あれは初級魔法だ! それも最弱のな!」とギルバートが説明を入れる。

「あれで初級魔法ですって!? 冗談はよしなさいよ!」と信じられずにいるアンナにベネットが「いや、残念ながら冗談じゃない」と答えた。 しかしアンナはにわかに信じられずにいた。

「強くなったな?」

 素直に成長を褒めてくるレオンに、「まあね」とミシェルは微笑みながら攻撃を続ける。


『相性抜群だな!』


『俺はミシェルが良いんだよぉ……!』


『俺はミシェルと一緒にいたい……。 これからも、ずっと……』


 戦いの中、思い出すレオンとの出来事。

 彼がいたから希望が持てた。 彼がいたから頑張れた。 彼がいたから……、僕は強くなれたんだ!

「そろそろ本気を出そうか! 『魔装』!」

 レオンは漆黒の右翼をはためかせた。 それに対抗する様に、ミシェルも魔装を唱え、純白の左翼をはためかせる。

 黒き天使は目にも留まらぬ速さで一気に白き天使との距離を詰め、拳や蹴りを次々と放つ。 だが、白き天使は顔色を変える事無くそれらを全て手で払い除ける。

 み、見えない……!

 あいつら、本当に同調してないんだよな……?

 凄い……!

 異常な戦闘力の強さに、驚愕する観客たち。

「ミシェル、そろそろ終わりにしようぜ?」

 そう言ってレオンはミシェルから距離を取り、上空に浮いた。

 ミシェルは首を他に振ってそれに賛同する。

 するとレオンは口角を上げて右腕を天に掲げた。

「ザ・ダーク」

 静かに唱えると、レオンの右手から禍々しい闇が放たれ、ミシェルに降りかかる。

 嫌な予感を覚えたベネットたちはミシェルの名を叫んだ。

 大丈夫だよ、皆。

 僕はもう、大丈夫。

 皆のお蔭で強くなれたから。

 だから、見ていて。

 強くなった僕を!

 迫りくる膨大な闇に、ミシェルは恐れる事無く、寧ろ静かに笑いながら右手をその闇に向けた。


「ザ・ホーリー」

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