039「妖精さん、ロリドワーフの過去の傷を知る」


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『妖精さんっ!突撃だ!』

『妖精さん!相手に十万ボルトだ!

俺は妖精さんを使役して、女装娘業界の頂点に立ってみせる!』


シルバーは緊張しながらゆっくり降下した。これから裸の女の子に近づくのだ。

既に嫁が二人いて、着替えを見慣れているとはいえ、人として何かが間違っている。

そんな気がしたが、外貨(日本円)が欲しいから、ネットの皆に従わざる負えない。

身体をフキフキしているロリドワーフ娘の視線が、こちらに移った。

覗きをしている事が完全にばれてしまった、これでは不審者だ。

もうこうなったらシルバーは――自然な感じを装うしか道がない。


「おーい、ミカドワ~。

石鹸がないようだから、石鹸をプレゼントしにきた~」


『なんて無茶な言い訳wwwww』

『もう少し、まともな言い訳はなかったのかwww妖精さんwww』


警戒感を顕にしたミカドワは、布で女性の神秘に包まれた秘部を隠し、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに、こちら側を睨んでくる。

そんなロリドワーフ娘の様子に、シルバーは、これはこれで、新鮮さを感じて良いなと思った。


「な、なんだい!?

シルバーの旦那!女の裸を覗くのは良い趣味じゃないよ!

ま、まさかアタイの身体が目当てだったりするのかいっ……?

くっ……!工房の皆を守るためなんだからねっ……!

決して、アタイは快楽に屈したりしないんだよっ……!

やるならやりな!その代わりに、工房の皆には手出しさせないよ!」


口調はオバサンだったが、声は高くて女の子らしい癒しボイス。

小さい女の子のセリフだから、シルバーもネットの皆も、とっても心が寛いだ。


『女騎士に転職してから、そのセリフを言ってくださいミカドワさん』

『うむ……エッチィ展開を期待する女にしか見えないな……発言だけを見ると……これは手を出しても良いという意味だろうか?』


「いや、聞きたい事があるんだ、ミカドワ。

……その背中の傷はどうしたんだ?」


『妖精さん、勇者だ』

『裸のロリ娘に近づいて、質問できる勇者がここにはおられる』


シルバーは場の雰囲気を読まずに、強引に事を進めた。

覗きをしていたという事実から、スムーズに話題が逸れる。

過去を思い出す素振りをしたミカドワが、小さい声、しかし、恨みが篭った怒りの口調で――


「この背中はね……人間どもがやったんだよ。

それも鞭じゃなくて、錆びた剣でね。

アタイがドワーフじゃなかったら、とっくの昔に出血多量死が、体が腐って死んでいた所さ」


「……鞭じゃなくて剣?」


「あいつらは、とんでもない残虐な生物なんだよ。

おかげで、アタイの人生は散々さ。

下手したら手足を切断されていた未来も有り得たかもね。

まぁ、アタイら亜人は、手足を失っても再生するんだけどさ。どういう原理かは知らないけどね」


『剣で躾する人間様とか……なにそれ怖い。普通、鞭だろ』

『鞭で、ミカドワたんをパシーンパシーン調教したい』

『細胞核が機械だから、生命力が凄いのかお?』


亜人のデタラメっぷりに、シルバーは驚いたが、その動揺を表に出さずに隠した。

亜人を構成する細胞。その中心が機械で出来ている時点で、何でもありなのは容易に受け入れられる。

さすがに手足まで再生できるデタラメさを持っているのは予想外だったが。

……それよりも、今はミカドワに危害を加えたゴミどもの事を聞かなければいけない、シルバーはそんな気がした。


「人間って……あのハムスターみたいな顔をした奴らか?

態度がとっても悪くてウザい感じの」


「そうだよ。しかも、旦那と、ちょうど揉めている村の奴らにね。

アタイを誘拐して低賃金で働かせるわ、無理やり、ドワーフを増やすために、家畜みたいに種付けをやらせようとするわ、とんでもない奴らだよ。

普通の女性だったら、虐待されて死んでいる所さ」


『普通の女性って何だお?』

『転生者疑惑があるロリ娘だから、人間(ホモ・サピエンス)だったら、とっくの昔に死んでいるって意味じゃね?』


「……そんな事を聞いてすまん、ミカドワ。

あ、この石鹸は受け取ってくれ。

別に対価は求めてないから」


そう言ってシルバーは、右手に持っている薬草石鹸を、ミカドワに手渡した。

その瞬間、邪悪なる欲望の神々が――


『よっしゃ!妖精さん!身体で慰めてあげるんだ!』

『妖精さん!今だ!ラッキースケベ展開!』

『転んだ振りをして、ミカドワたんを押し倒すのです!』

『ロリドワーフと子作りはよ!』


そんな邪悪なる誘惑を、シルバーは拒絶し、ミカドワに背を向けて、この場から飛び立とうとした。

だが、ミカドワが、その背中に声をかけてきたから、ショタ妖精は飛ぶのを中断する。


「……旦那」


「ん?どうしたんだ?」


「旦那は、きっと、人間どもを虐殺するよ。

アタイら亜人と、人間は生態が違いすぎるからね。

だから、今のうちにお礼を言っておくよ。

……ありがとう。

人間どもを殺してくれてありがとう」


「いや、そんな事でお礼を言われてもな……。

まだ虐殺すると決まった訳じゃないんだぞ?

そりゃ交渉が拗れたら、殺す可能性もあるけどさ」


「アタイは、あいつらに許せないくらい深い恨みがあるんだ。

これ以上は……話したくないね。人間どもの話をするだけでイラつくよ。

あと、そこのお前達!

さっきから覗いているのは知っているんだよ!」


ミカドワが、右手に持っている薬草石鹸を、塀へと投げつけた。

塀へと当たり、石鹸が裏庭を転がる。


『せっかくの石鹸さんがぁー!』

『泡で白濁になった合法ロリのシーンが見れないー!?』

『いや!見ろ!ミカドワたんの裸体は美しく輝いている!』


ちょうど、ロリドワーフ娘の裸を隠していた布も空を飛び、今の彼女のうつくしい肢体を隠すものは、何もありはしなかった。

ネットの皆は喜びの声を上げて、ミカドワの身体を絶賛する。


『キター!ミカドワたんの裸っー!チッパイー!』

『妖精さんをけしかけて良かった!寄付金千円追加するわ!』

『たまらん健康的な肌だお!この娘もお嫁さんにするんだお!妖精さん!』


塀の向こう側からは、覗きをしていた、男のドワーフ達の声が響いた。


「「姉御に気づかれたー!逃げろぉおー!!!」

「「領主様に、姉御を取られるのは嫌だぁぁぁぁ!」」

「夜這いして寝とっておけば良かったぁぁぁぁ!!」

「今の発言した奴はぶっ殺す!」「誰だ!今の糞野郎は!」


シルバーは、ミカドワに迷惑をかけた詫びに、腰のホルスターから自動拳銃を引き抜き、頭上へと銃口をかかげ、引き金を引いた。

ターン!

乾いた銃声が響き、興奮したドワーフの男たちは静まり返る。

そこにシルバーは、冷たい声で――


「ミカドワに夜這いした奴は、俺が体に穴を開けてやる。

彼女と夫婦になりたいなら、ちゃんとプロポーズしろよ。

お前ら、豚人間か?豚なのか?

無理やりレイプは良くない」


『借金を利用して、エルフ娘を嫁にした男のセリフでござる』


「「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!

領主様ぁぁぁぁぁぁ!!」」

「「ひぃぃぃぃぃ!!

やっぱり恐ろしいお方だぁぁぁぁ!!!」」

「「姉御の事をよろしくお願いします!幸せにしてやってください!」」


銃に恐怖したドワーフ達は、土下座して、小さな独裁者にひれ伏す。

これで、ミカドワが無理やりエッチィ事をされる可能性が激減し、ショタ妖精の罪滅ぼしは終わった――


『どつちも覗きをした現行犯な件』

『妖精さんが言っていいセリフじゃないお』


そして、新しい謎が生まれる。

ミカドワの辛い過去だ。人間の事を恨みすぎて、心を苦しめる精神的なトラウマがありそうな雰囲気だった。

錆びた剣で斬られる以上の、深くて悪質な行為を、シルバーは全く想像できない。


『ミカドワちゃんの恨みって何だお?』

『うむ……何か、とても辛すぎる過去があったのだろうな……』

『たぶん、ミカドワちゃんも非処女だお……おかしいお……

異世界は処女だらけじゃないのかお……?エルフィンたんも豚人間のせいで中古だし、新品はプラチナたんだけだお?』

『あんな可愛い娘が処女な訳がない』


そんなネットの皆の雑談を余所に、裸のミカドワが、両手で胸を隠して、顔を恥ずかしそうに真っ赤にしていた。

小さな身体を隠すものが、裏庭に転がって、土まみれになった布しかない。


「アンタら!早く出て行きな!

いつまでアタイの裸を覗いているんだい!」



『サーセンwwwww』

『田舎はいいお。覗きは文化だお』


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