第157話:追い風

「まるで成人式の日に振袖業者がトンズラ来いたような光景にも伺えるな」

 入道がそう呟くのも無理はなかった。金成は明らかに余裕を見せていた。

「わしらもやられてしまうのかのお」

 牟田は姿を隠しつつ、寝首をかくチャンスをうかがっていた。

「おいおっさん、俺からは逃げられねえぜ」

 目黒が牟田の足取りをサイコメトリーで追う。その追随を美姫がサウザントスプリングで追い込みをかける。

「この二人のコンビもめんどうであるな。しかたないのぉ」

 牟田が初めて姿を現した。

「結局姿が見えているようなものであれば隠れていても仕方あるまい」

「観念したようだなおっさん」

「おっさんではない、まだわしは30代」

「おっさん臭い話し方やめろ」

「それより主は何故そのような能力を手に入れた?」

「痴漢冤罪を暴露してやろうと思ってな」

「くだらぬ理由じゃ」

「能力にくだらないもへったくれもないとは思うがな」

「おい」

 金成がテレポートし、牟田の背後に周り頭上から一撃かます。

牟田が倒れ込み、手から突如銃が出てきた。

「え?」

「こいつは姿を現し、油断したところをお前ら2人を撃とうとしてた」

「過去の残像であれば現在進行形のことまでは見えぬと想定していたが、まさか未来の情報を察知し、吾輩の攻撃パターンを予測したというわけか」

「お前らの行動は手に取るようにわかる」

「主は何を目指す?」

「戦わずして勝つ」


 百戦百勝が善とするのではなく、戦わずして勝つことこそが最善とする。しかし戦わなければいけない場面の時には100%俺が勝つという勢いを魅せなければいけない。

 逆風も振り返れば追い風へと変わる。今まさに金成たちは流れを掴んでいる。

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