第142話:応対も時は金成

「時は金成は分かるけど、応対もって何処から来たんだ?」

「今から順に説明する」

 金成はホワイトボードを取り出し、説明をした。


「俺は最初スキルマスターを持つとき、何もなかった。つまり空っぽだった。ペットボトルの空の容器のように、何もない。しかしそこには色々と詰め込んでいくことができる、いわばただの容器でしかなかった。だが俺は多くの人と接していくうちに様々な情報を手に入れ、そしていつしか何もなかった空の容器の中に色々なスキルが詰まっていった。ただの媒体であれば何の価値がないにしても、今は色んなものがブレンドされている。最初は渋谷のファイヤーから始まり、鳳凰のフェニックスで終わる。勿論これからもどんどん容量が増えていく。容量が増えれば増えるほど、俺の能力はさらに特殊化され、より多くの困難に立ち向かうことができる」


「成程な、確かにスキルマスターと言っても最初からスキルをマスターしているわけではなく、最初は何もない状態から少しずつスキルを手に入れていき、いつしか大きな力へと変わっていっているんだな」


「ああ、だから他の人と接することが大事。つまり『人と応対するってことも時には金なり』になるってことだ。面倒と思わず、応対することによってそれは大きな力になるための架け橋へと変わっていくんだ。俺はそれを弾み車を回すと呼んでいる」


「弾み車を回す?」


「ああ、最初は小さな、ただゆっくりとした回転だが、それは次第に大きく変化していく。いきなり何回転もするわけではなく、1回転、2回転とゆっくりだ。だがいつしかその回転は勢いが止まらなくなる。1000回転している頃にはもう勝手に回り続けるだろう。最初の一押しはすごく大変だ。だが、その一押しが凄く重要。俺は何もない状態から1つ1つスキルを身に着け、最終的には秋葉王、この国のトップの喉元にまで届きかけた。勿論失敗に陥いたが」


「応対も時は金成、弾み車を回すか」


「いきなり立派な会社が設立されるわけではなく、社長達は皆地道な作業をコツコツと積み上げていった。それと一緒だ。それがいつしか大きな会社となり、マスコミに投じられる。だが、マスコミから記者会見をする時にはなぜ今のエクセレントカンパニーに至ったのかを軽く聞かれるだけだ。たった2ページぐらいの文字盤でしかその内容は語られず、本来10年20年の積み重ねた人生は一概に語ることなど到底できないものだからだ。俺のスキルとて一朝一夕で身に着けれたわけじゃない。相手の望みを叶え、そして対価としていただき、そこから状況に合わせて能力を使い分け、色々と分析・混合させて新たなスキルを生み出すことができないかどうかを研究しつくした。そして阿修羅や素戔嗚と戦い、いつしか伊弉諾や伊弉冉、王最強の盾の鳳凰とも戦った。だが、俺一人の力では到底クリアできない。そこに大きな壁を生じた。人一人で出来ることはやはり知れている。自分一人で商品を仕入れて陳列して販売するまでの流れを作るのは簡単だ。だが、大きな組織、チェーンストアへと進化させるためには、スーパーバイザーの存在が重要だ。エリアマネジャーの存在、社長の思想を忠実に再現してくれる部長や課長の存在は極めて重要だ。それを設立していなかったから、前回の敗北はあったと確信した。全ては俺の驕りが生じたことを深く反省する」


「地道な作業をコツコツとしてきたのか。たいしたやつだな、それだと成果は出ても評価はでないだろう。何せ結果が目に見えにくい、先見性に優れた戦略でしかないから周りには評価されないだろう」


「周りからの評価はいらない。あくまで自己評価が出来ればそれで十分。どうしても背伸びしてしまうからな目立ってしまうと。かえって評価がつかないほうが都合がいいときもあるんだ。だから俺のスキルマスターは表舞台へ出ることなく、鳳凰の能力を手に入れるところまできた。今後もこのスキルマスターへの道を歩んでいき、俺は日本統治を目指して行くさ。ただスキルだけが重要でないと感じている。国や社会は人間の手で作られていく。一人の人間が100%のものを作るより、2人の人間で50%ずつ、10人の人間で10%ずつ創り上げていく方が感動の共有ができる。以前転校生の富士が俺に1+1=?と質問をしてきた。人間関係や信頼関係次第で2よりも大きな数字へと変わると。俺はその可能性を信じたい。そして、次は必ず勝つとここに誓う」


「決まりだな。で、大将、いつ攻め込む」


「武藤のおっさんと再度合流し、武藤のおっさんからの情報ももらい、そして戦いを再度かける。正を以て合い、奇を以て勝ちにいく。正面突破ではなく、奇襲作戦で行く」


「断じて行えば鬼神もこれを避くってやつだな。いっちょやってやりますかな」


 新組織、改名並びに「応対も時は金成」連合部隊が秋葉王並びに王最強の盾&王直属の戦士に再び戦いを挑む日はそう遠くなかった。

 

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