第53話:浪速王②

資本収益率とは1年間に投下された資本で得られた収益がその資本の何%に当たるのかを指すことである。

浪速王が言いたいことは経済の成長率よりも資本の収益率の方が圧倒的であるということを歴史が証明していることを口にした。

速い話がエリート志向、つまり年収1,000万円や2,000万円を目指すことよりも、年商30億を超える経営をしている父の娘と結婚しろと言いたいそうだ。


「資本収益率いうてもまあお金と言えばお金だが、全てがお金から年何%稼げたかというわけでもない。要はお金が入ってくる流れを自ら創作したかによるんだよな」

浪速王は得意げに話す。それに対してリポートする女性であった。

「つまり勝手にお金が湧き上がってくるとでもいうのですか?そんなおいしい話は怪しいんじゃないですか?」

「そりゃ誰かが持ってきた投資物件は怪しい話だろうな。相手に利得がある場合はしないに越したことはないだろう。何故ならもしそれが儲かる話なら、わざわざ他人に言うより自分でやった方が稼げるのにって思うのが普通だろ?つまり『1日5分の作業で1万円稼げます』って話は強ち嘘というわけではないが、その人の今まで積み上げてきたものが重なり、最終的な結果論で言えばそれは本当の話。しかしその話が省略されているから何故5分で1万円も稼げるんだろうか?全然稼げないじゃないか!って激怒し、それらは詐欺商品化しているというわけだ」

「なんだか難しい話ですね。そういった投資の話は」

「投資はしたほうがいいが、余裕資金でやるに越したことはない。だが投資なんか出来ないんだ。さっきも言ったようにまず借金返さないといけないのに投資は愚か貯蓄も儘ならんだろう。だからジュニアNISAなんてのもあるぐらい子供のころから資本収益率は意識しておかなければいけないってわけ。桃栗三年柿八年、それに加えて投資10年ってな!10歳の頃に始めてりゃ20歳になった時には資本収益率に伴ってそれに年収も加算させることができりゃゆとり世代でもバブル世代に匹敵できるぐらいの力になるってもんよ」

「私も投資してみようかしら・・・?」

浪速王が女性の身なりを見るなり、気にしていることがあった。

そして気になる質問をかわしてみた。


「あんたさ、カプモンDAって知ってる?」

「ああ、一時期流行したスマホアプリですね。確かモンスターがダッシュで逃げるのでそれをDASHで追いかけて、がちゃカプセルを投げ飛ばしてモンスターを捕まえる奴」

「やったことあるの?」

「そりゃありますよ。友達と一緒にモンスター捕まえにいきましたよ。でも走りまくるから周りの人達にぶつかりそうになって、警察官に補導されてる人も何人か見ましたよ」

「ふーん、で、今もそれってやってるの?」

「やってませんよ。動作に飽きてしまい、誰もやらなくなってますし、今はもうアンインストールしましたよ」

「成程な、あんた株の投資とか向いてないわ」

「え?」


金成はこのやり取りを気にしていた。

「金成、どう思う?」

「まあ言いたいことは分かるな。流行に乗せられただけで、自身の意志で始めたわけではなく、そして周りに感化される。これでは株取引も難しいんでないか?」


「どうして私が投資に向いてないんですか?」

「だってあんた、続かないじゃん。株取引もマンション経営もやることは地味なのよ?カプモンDAっていう単純なゲームですら続かないのに、なんで投資が続くか逆に教えてほしいものだね」

「それは、お金が稼げるってわかっているなら続けますよ!」

「ならカプモンDAに出てくるレアモンスターの七つの大罪が時価総額いくらか知ってる?」

「いや、分からないです」

「1匹あたりの価値はおよそ30万と言われている。7匹揃えば210万だが、マニアの中ではそのデータ欲しさに1,000万円出しているとされている。なんせ幻のモンスターだから7匹揃えてるデータはこの世で数点だ。なんせ壁の影響で他国に外交出来るのは1ヶ月に1回、しかも24時間と決まっているからな。七つの大罪はそれぞれ各地に散らばっている。見つける方も苦労するのさ」

「1,000万円もするんですか・・・でもそんな激レアモンスター見つけるのは私には無理ですよ・・・」

「なら大化け株するテンバガー銘柄探すのも無理だろうな。そんなだから投資てのは向いてないんだよ」

「はあ・・・」

話の行先がなぜかリポーターを説教する方面に向かっている。

カメラマンから指示を受け、話を戻すことにした。


「それで資本収益率というのは投資だけの話でしょうか?」

「ゆとり世代ならではの事業展開ってのがある」

「それはつまり・・・?」

「インターネットとスマホを使った事業。例えばアフィリエイト、これはブログに趣味などを書き込みして、多くのファン客を集客することで、興味を持たせ、サイトにアクセス数を増やし、そして紹介した商品が売れれば広告主から紹介料としてお金をいただく」

リポーターは必死にメモをしている。

「次にインターネットとスマホを使って出来る事業の例として電子書籍の活用だな。今まで本の出版には業者と結託するだけでなく、本の印刷代や展開する店などの販促費など多くかかり、出版する前に多額の費用を要する。要するに増刷しまくって全国展開してもその本が全く話題性もなくヒットしなきゃ残るのは借金だけよ。団塊やバブルはそんな中でやっていたから競争者も少ないが、リスクも大きい。ハイリスク・ハイリターンってやつだな。だがゆとり世代にとっての大きなメリットはこの便利道具を活用し、販売業者と結託するだけで電子書籍として販売してしまえば大きなメリットとしてはまずは印刷代は0円だな。なんせネット配信だから形がその場にあるわけじゃない。ただのPDFなら金なんかかからない。次いで宣伝行為をすれば確かにお金が掛かるのは仕方ないが、宣伝せずに顧客から検索されやすい人気キーワードなど的を絞り、宣伝無しで売れるように検索上のトップに来るように取り組めば、これもまた0円。つまり次世代の本の販売の仕方として費用と宣伝費0円で販売可能。1冊売れるだけで利益が出る。これぞまさにローリスクハイリターンってやつだな。売れなくてもローリスクローリターンで何も失うものがない。これがゆとり世代のもつ究極の資本収益率。お金を呼び寄せる時給0円で働いてくれるAI人工知能を活用したネットとスマホの共依存ってやつだな」

「アフィリエイトと電子書籍・・・で、資本収益率を拡大していくわけですね」

「まあヒットするしないは顧客のニーズ程度、後はどれだけ口コミされるか、まあそういった事業をさっさとやっておけば最初の1年は成果なくても10年経てば少しぐらいは成果ありじゃない?これがゆとり世代が意識しなければいけない資本収益率って感じだな。楽して金稼ぎだな」

「い、以上!浪速王よりゆとり世代が取り組むべきこと、それはAI人工知能を駆使して費用0円でネットで稼ぐ方法編でした!」


テレビはこれで終わったのだ。

「副業を促進させるようなインタビューだが、企業によっては副業は厳しいんじゃないのか?」

「確かにな。でも最近の企業は副業に関しても力を入れているのは事実さ。しかし資本主義者ときたもんだな、浪速王ってのは。格差を縮めるどころか拡げる一方じゃねえのかこれ?」

「まあ知った者勝ち、早めに取り組んだ者勝ちってやつだな」

「応対するも時は金なり。自持思想論にもそういうことがあったっけか」


金成は物思いに耽、外を見渡した。

辺りはもう夜になっている。

「腹が減ったな。そこの若人成程でドライブスルーしてもらうか?」

「そうだな、運転手さん。そこの若人成程はいって」

「あいよー」

若人成程は24時間営業の為、特に若者に人気のハンバーガーショップだ。

「いらっしゃいませー。ご注文どうぞ」

マイク越しに女の声で店員さんがハキハキと物言う。

「えっと・・・」

画面を見てダブルチーズバーガーを注文しようとした時、

「あれ?値段一緒でトリプルチーズバーガーなんてのがあるぞ?」

「ああ、今期間限定でキャンペーンやってます」

「これはお得だな。よしこれにしよう」

「ポテトMと後はメロンソーダで」

2人は若人成程で食事をし、そのまま家に帰っていった。


金成は来週月曜日の武術大会に向けて作戦を考えていた。

資本主義が勝つか、経済民主主義が勝つか。いずれにしても限られた時間の中でどう戦い、王直属の戦士十戒の阿修羅と素戔嗚に勝ちに行くか。浪速王の言葉がつっかかる。次世代の便利道具を駆使して楽して金稼ぎ。これらは前の世代では到底出来ない、まさにテクノロジーの進化が今の現代にはある。

つまり現代には現代のやり方がある。

金成は自身の能力を見つめなおし、俺なりの戦い方、やり方があるということを諭した。

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