第14話 許されざる客

真夜中0時を過ぎる頃、

サポートセンターの人員はグンと減り、

変な電話が多くなる。

 

有名な「浅草ロック座のおじいちゃん」などのお客様が現れる。


なんでも「浅草ロック座」の関連サイトが見たいらしいが

検索手段がわからないという。

YahooとかGoogleの検索欄に文字入力をしてもらうのだが

これがなかなかどうして、文字入力ができない。


相当な時間をかけても入力できなくて

おじいちゃんは疲れて就寝、対応終了。

これが毎日続いたという、伝説の「浅草ロック座おじいちゃん」。

 

さて、今日。 

 

日付変更線で受けた電話は自慢話を延々話し続ける年配の女性。

案件はメール送受信設定なのですが。

 

 

お客様、プロバイダから届いている設定用紙を手元に準備して頂きましたらお声を…

「そんなもの見なくてもわかりますよ!

あなた、私を馬鹿にしてらっしゃるの!!!」

 

カチャカチャ

 

「もう、なんでこんなに文字が小さいの?!

正直これはあなた方の開発段階での怠慢ですよ!!」

 


「あら、ちょっとサーバー名ってところがわからないわ」

それでしたら設定用紙を…

「以前使用していたPCの設定を見ればいいじゃない!

いい加減なサポートしないでくださる?!」

 

申し訳ございません、

このあとに入力するパスワードなどは米印などになっておりますので以前のPCの設定から確認することは判別は困難でございます。やはり設定用紙が…


「私にはわかります!」

 

カチャカチャ

「できました」


ありがとうございます、それでは送受信のテストを…

 

「なにか出たわ。『要求されたタスクを処理中に~』」


エラーですので、では再度設定の見直しを… 

「またエラーだわ」

では、再度…

「エラーよ」

では、再度…

「エラーになるわ」


設定用紙みらんかぃこのクソババア!


いやいや、落ち着け。飲み込め!態度に出すな!

 

ハァハァハァ 

 

それでは再度、設定の見直しをプロパティから…

「ちょっと!あなたが読み上げて私に教えてくれればいいじゃない!」

 

申し訳ございません、メールの設定項目はプロバイダが発行したもので

弊社では詳細がわからず、お客様に読み上げることも出来…

「わかってるわよ!!!馬鹿にしないで頂戴!」

 

「大体ね、お宅、どちらにいらっしゃるの!?」

 

九州でございます。

 

「あら、東京じゃないの?」

 

サポート部門は各地にございまして、その中の九州に繋がっております。

 

「ふぅん~あっそう。九州ってどこなのよ」

 

 

※解説しよう

通常、そのサポートセンターの所在地は言わない方針である。

何故ならば膨大な顧客情報を管理しているため、

顧客管理情報上、伝えてはいけないのである。

どうしてもという場合、県名まではOKであったりする。

弊社の場合、東北1箇所、関東2箇所、そして福岡なのだ。


だが、この場合、もう意地でも言いたくない。

 

「ちょっと!言いなさいよ!九州といえば福岡でしょう?」

 

九州といえば福岡なのか?違うだろう? 

 

「あなた、まさか、離島とかじゃないでしょうね!」 


おばちゃん、まくし立てる

「離島なんて冗談じゃないわ!」 

 

離島を馬鹿にしてます。 

なんだか非常に腹が立ってきました。

設定用紙がなければ設定できないことは100%明白ですがお客様が拒否される以上、納得いくまで一緒にやります。ですが、それとこれとは別問題です。

 

おばちゃん、まだ何かわめき続けています。

九州=福岡、という方程式の論理を。

 

やばいです、限界です。

 

「あの、お客様!」

(だめだ…止まらねぇ) 

「離島ならどうだっていうんですかッ?!」

 

「なに言ってるの!?離島に住む田舎者にパソコンなんて

わかるわけないじゃない!

大体ね、都会の人間と受けた教育が全く違うじゃない!」

 

ぷっちーーーーーーん

 

限界突破です!

 

  

「お客様!!!」

 

 

「もういいわ、送受信さっさとやってよ」


くっ…

  

 

結局、2時間半も繰り返し設定。

 

最後は やはりプロバイダの設定用紙を見ていただくことになり

しかもそれが見当たらないということで…

 

まだこの後も続きがありますが、

馬鹿とか刺すぞとか言われても平気、じゃないけど

この時は真剣に言い返してしまった。 

 

絶対やってはいけないことだった…。

 

しかし客だったら何でも言っていいのか?

そうですね、などと相槌を打てないことだってある!


こうして理不尽な夜は続くのであった。

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