『罪人と人形』
皓月
第1話『始まりの話』
戦争が終わり、人々は徐々に平和で豊かに暮らし始めた
そして今ではコンクリートの建物が増え、ビルなんて物まで多く作られた
だが、その一方では生きる為に本当に必要な“自然”が失われつつあった
そんな頃、事件は起きた
「キャァアア─────・・・!!」
「ガルルルッ」
全身毛むくじゃらの“生き物”が女性の肉を喰らい、遠吠えをする
元“人間”だった筈のソレは、鋭くて恐ろしい牙を剥き出しに骨ごと喰らいついていた
バキッゴリッと不気味に音を立てて…
その日を境に、人々は謎の“生き物”に襲われることになった
被害が増え始めた頃、それに対抗出来る組織が作られた
その名も“アカデミー”と言う
そして、最も才能ある人材が集められたチームのことを“デスジェネシス”と呼ばれている
“デスジェネシス”では二人一組に分けられ、一人は優秀な人間でもう一人はこの世を最も危険にさせ、そして唯一あれらと闘える生き物“モンスター”である
そしてそれは何年も続いた
そう、何年も──────・・・
「…ミッション完了。本部へ帰還します」
『ご苦労。本部へ帰還後、教官室に出向くように』
「了解」
インカムから音が途絶える
その瞬間、背後に血だらけになった“生き物”が襲いかかった
「…スキアリー!!」
声は低く唸るような酷い声を出す
その人物は素早く攻撃を交わしその“生き物”の後ろに回った
「…っ!?シマッ───ギャアァァア!!!」
元“生き物”だったその頭に拳銃を突き立て打った女性は、何事もなかったように本部へと帰還するのだった
その頃、ある牢屋では
「………」
「オイ、いつまで寝てるんだ?
「…イイだろ、別に…やることもねぇし、暇だし」
そう言って寝返りをする男…
「あー、その事なんだが…“また”パートナーになる奴が今日ここに来るらしい」
杖をつく若者は苦笑いをしながらそう告げた
若者の言葉に、ピクリと身体を動かして怪しく口の端を上げて起き上がる多田羅
「…へぇ、今度はいつまで持つと思う?」
「……さぁな。けど、今回の“管理者”はうまくいってほしいもんだな」
「…………今回も長くは続かねぇよ」
白銀の長い髪を掻き揚げながら、多田羅はベッドから立ち上がる
そして檻の外にいる若者へと歩み寄る
「でも…お前のような“過ち”は二度としないさ」
「尊……」
多田羅はゆっくりとベッドへと戻って横になった
若者と多田羅の間にこれ以上の会話はない
ただあるのは、重苦しい空気だけ
若者は何も言わず……否言いかけた言葉を飲み込んで、その場を立ち去った
「……お前のような過ちは……二度と」
若者が去ったあと、多田羅は自分に言い聞かせるようにそう呟いて拳を血が出る程に強く握り締めた
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