「どうだい? ネットやテレビの様子は」

と敦。

時刻は十二時十分。

敦は今まさに内線で友善元素との通話を終えて受話器を置いたばかりだった。


私と祐二はそれぞれノートパソコンに向かっていた。主に私がインターネットへの発信担当で、祐二はカメラ映像とテレビの確認担当という分担にしていた。


「テレビは昼のニュースに入ったよ。あとニュースない局には臨時ニュースがテロップ入ったんだよね?」

「うん。全部かは分からないけどだいたいのところは見た。流れた。十二時前から入ってるね」


「ネットも今のところ順調かな。掲示板にスレッド立ててある。本人で認知されたと思う。要求はまだ載せてない」


「オーケー。今さっき友善元素に、要求はメディアで確認するように伝えたところだから、始めようか。スノ、電話入れてあるテレビ局のページにどんどん要求流してってくれ」

「分かった。第一弾だな」


「イソ、警察の動きは」

「目に見えるものはないねえ。カメラで見える範囲には工場の人間だって近付いてない。律儀なもんだね」


「こっちからわざわざ通報してやったんだ、総務のほうにはとっくに来てるはずさ。警察はすごいんだ。正午のこちらからの連絡待ちだったんだろうな。人質がいないと思ってのんびりやっているのかもしれない。ま、これから尻に火をつけてやる」


「じゃあ、予定通り、第一弾、流すから」

「頼む。さあて、何時間粘れるか。明日の朝がベストだなあ。立てこもり事件じゃなくて誘拐事件なんだってことに警察が早く気付いてくれるとやりやすくなるんだが、どうだかな」


「やってみるさ。川田のこともマスコミにリークするタイミングだね」

「ああ。案の定、川田はタイムラインに目撃情報流してくれたからバッチリだな」

私はそう言う敦にニコリうなずいた。

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