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夜が来た。
私達のよみどおり、警察に目立った動きは起きなかった。
地味な連絡と交渉の繰り返し。
いっぽう、日が暮れる直前に、報道の連中が、投光器を第二加工棟の手前に設置していった。
おかげでまるで工事現場のように、入り口の辺りが白く照らされるようになった。
トラックがハイエースの近くに寄せて停めるときにもこれは役立つ。
他にはこれということもない膠着状態が数時間続き、その間に祐二が仮眠をとった。祐二はこれから朝まで働き詰めになるのだ。
私と敦はというと、お菓子の三木で駄菓子を積んだトラックが第二加工棟にやってくるのを心待ちにしていた。
もちろん、駄菓子が楽しみだったのではない。トラックそのものが楽しみだった。私達のちょっとした脱出トリックがすでに動き始めていたのだ。
私は日暮里暮らしが始まってからこの手記を書きはじめているのだが、若月に入ってからのことはまさに立てこもり中に書いている。
若月に入るところから、深美が登場していないことに気付かれただろうか?
深美は由希子と二人、別働隊として動いていた……わけではない。
目に見える形ではこれまで何もしていなかったから触れてこなかったが、実は深美はこのときすでに若月工場の中に潜入していたのだ。
それが、ささやかなトリックの秘密である。
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