第75話 コーリィの両親である!
『はー、コーリィの両親であるか。あ、吾輩はネコである。』
吾輩がコーリィとのテレパシーと同じ要領で頭の中で呟くと、男の方――グラァード・ディアントは怪訝そうな顔を浮かべたから聞こえているのであろう。
もしや、コーリィにも聞こえているのかと思いちらりとコーリィに視線を移すと依然として熱心に墓に語り掛けていたである。ちなみに今は吾輩がコーリィを買った後にラダンの店の従業員に服を着せ替え人形の如く着せられていたところを語っている。
というか、何故そんな顔浮かべたしコーリィ父。
『化けて出たというのに、あまり驚かないのだな……つまらん。』
そんなこと真面目な顔をして言われても知らんがな。
『お生憎、幽霊など結構見たことあるのでな。さして珍しくもないである。』
『ほう。人を襲うゴーストは俺も冒険の時によく見たが、敵意を持たないゴーストは……いや、お前の言うところの幽霊か?は見たことないな。というか、そういう存在は』
吾輩はそれには答えず知らんぷりを決め込む。
何しろ吾輩が幽霊を見たのは前世の話であるからなーいやぁ、よく見たものよ。
暗い顔したサラリーマンの幽霊、死んだとも気付かず走り回る子供の幽霊。おぉ、鎧を着た幽霊や軍服を着た幽霊もいたであるな。
とまぁ、そんな訳で吾輩は心霊的な者に対して耐性があるから怖くとも何ともないのである。
『参ったなぁ、もうちょっといい反応してくれると思ったんだがな。』
『いいじゃないのよあなた。それよりも……』
何やら話があるみたいであるな。
ふーむ、化けて出たってことは吾輩に恨み言でも言いに来たのであろうな。
なにしろ、心当たりがあるであるからな、でかいやつが。
『おぉ、そうだったな!ネコ殿よ、感謝する!』
『え?感謝……であるか?コーリィを奴隷にしたことを怒っているのではないのであるか?』
『奴隷にしてはいい生活をさせてもらっているようだが?』
確かに不自由させるような生活はさせてないつもりではあるが……奴隷と言う身分そのものはどうでもよいのか?この両親。
母親……ビレルレ・ディアントもにこにことしていて吾輩を咎めようとはしないみたいであるし……
『ネコ殿……すまん、ネコと呼んでもいいか?堅苦しいのは性に合わん。』
『好きに呼ぶがいいである。』
『おっ、じゃあそうさせてもらうぞ!んじゃ話の続きだ。親としては娘が奴隷と言うのは当然宜しくない。……ただまぁ、あんなに楽しそうに話す姿を見せられてはな。あいつも満足してるみたいだし』
吾輩との冒険譚語っているコーリィは、いつものクールさ……と言えばいいのか、どこか落ち着いた様子はどこに行ったのやら、まるで遊園地の話をする我が友の孫たちを連想させるように目を輝かせているである。
我が友もいつもしているゲームをせずに孫たちの話を嬉しそうに聞いていたのを覚えている。――まぁ吾輩はそれを尻目にゲームをしていたであるがな。
そういえば、こやつ等吾輩と話しているのにコーリィの話を聞いておれるのか……?
『えぇ聞こえてますよ?私達の本体はあの墓の中ですからね。骨からでも音は拾えてるんですよ。それに大事な一人娘の話を聞き逃すわけがありません。』
『へーそうであるかー。幽霊とは凄いものであるなぁーってんん!?』
ちょっと待て!今コイツ――ビレルレ、吾輩の考えていることを読んだのか!?
まさか鑑定……いや、読心スキル?だが、吾輩には”吾輩は猫である”があるはずであるぞ!?鑑定は妨害出来て読心は適応外とは思えぬぞ!?
『おいビレルレ……あまりコーリィの恩人……いや恩魔物?をあんまりからかうなよ?』
『あら、ごめんなさい?ついネコさんが可愛らしくてね?』
グラァードが額を抑えながら告げるに対して、ビレルレは口に手を抑え、くすくすと笑っている。
何?もしかして吾輩ビレルレに踊らされたのであるか?
『すまん、ネコ。ビレルレはな、なんつーか人の考えよく言い当てるんだよ。あの人ならこう攻める――あの人なら次はこう話すってな。すげぇ観察眼でまるで未来や人の心を読む女だと言われたんだ。』
『ふふ、ネコさんが私達とコーリィと私達の墓を交互に見ていましたから、分かりやすくてついつい?』
え?この口ぶり……スキルで吾輩の考えを読んだという訳ではないのか!?
な、なるほど。吾輩の”吾輩は猫である”はあくまで鑑定スキルの妨害……もしかしたら読心"スキル”であるならば妨害出来たのだろうが、恐らくさっきのはビレルレの技術。それならば妨害出来ぬのか。
うーん……分かりやす過ぎてしまったであるか……まぁコーリィの両親であるし大乗であろう。だが、これを教訓に注意せねばな。
『ったく、ビレルレは悪戯好き過ぎて困る……ネコ。お前に頼みがある。』
ふむ。まぁ予想していなかったわけでは無い。
わざわざ化けて出てきたのだ。礼を言うだけために出てきたわけでは……いや、この2人からしたらない話でも無さそうであるな。
そんなことはさておき。頼みと言うのであればやはり、闇ギルドに復讐してくれとでも言いたいのだろうか?
だが吾輩はその頼みを受けるわけには――
『コーリィを幸せにしてやってくれ。』
『闇ギルドのことは別にいいですからね?』
は?コーリィを幸せに?
しかもまたビレルレ、吾輩の心を読んだであるな!?
だ、だが闇ギルドの事は別にいいとは……自分たちを殺した相手であるぞ?
『ん?ネコは俺が闇ギルドに復讐してほしいと頼むと思っていたのか?』
『う、うむ。』
『ハハハ!そうかそうか。まぁそうだろうな!確かに闇ギルドの連中は憎い!殺したい程憎いが、そんなことはどうでもいい!』
グラァードは豪快に笑い飛ばし、ビレルレも同意するように微笑みながら頷く。
……さっきからこの夫婦に吾輩、驚かされてばかりであるな。
何か少し悔しいである。
『奴らと関わるとな、本当にろくなことがない。事実俺たちは殺され、コーリィは奴隷にされた。だから闇ギルドとは復讐など考えずに、関わり合いにならないでほしい。それが俺たちの願いだ。……受けてくれるか?』
『勿論である。』
元より、復讐など言われても断るつもりであった。
第一面倒であるからな。誰かの復讐の片棒を担ぐつもりはさらさらないであるからな。
『それを聞いて安心した……コーリィを頼むぞ。あいつは多分、復讐を考えている。だからお前が手綱を握っていてくれ。』
『善処するである。』
『いや、本当に頼むぞ?――んじゃ、俺たちは消えるぞ。コーリィの話を集中して聞きたいからな!』
『それでは、ネコさん。娘をよろしくお願いしますね?』
その言葉を最後に2人の姿が、煙の様に揺らめき、墓の中へと吸い込まれていった。
……あの様子だとここに来ればまた会うことが出来そうであるな……いや、用が無ければ特に会う気もないであるが。
しかし、話を集中して聞きたいとか言っていたが、もう10分以上たつし、流石にもう――
「で私ね、そこでラカロッテって女の子とね!」
え、まだそこであるか!?
しかも口調もいつの間にか砕けているであるな……!?
あぁ、ポチも眠ってしまっているであるな……
そこからコーリィの話は、1時間以上にも及んでしまったのである。
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