第60話 さらばアステルニである!

 3日後、ギルド長に言われた通りに冒険者ギルド前にて吾輩たち3人と2匹が集まった。

 会うなりリンピオが驚いたような声を上げたが、なるほどコーリィの顔。もとい覆面に驚いたであるか。

 まぁ無理もないであるか。男子3日会わざれば刮目して見よならぬ、コーリィ3日会わざれば顔ぐるぐる巻きであるからなー……

 対してロッテは一切見紛うことなくいつも通りにコーリィとあいさつを交わす。と言っても、コーリィとロッテは毎日のように会っているからハイドマフラーぐるぐる巻き状態のコーリィに見慣れたようである。


 ギルド前でそんな具合に談笑してると、扉が開き、そこよりギルド長がやってきた。

 ってよく見ると扉の奥から突き刺さるような視線が見える。……まぁなんてこたぁない、どこから噂が漏れたかは知らぬが、吾輩たちが王都から召喚命令されたことを知り、一目見ようとした冒険者たちである。


「おう、お前ら。揃ったみたいだな。」

「ギルド長、王都からの迎えというのはいつ来るんですか?」

「そろそろ来るはずなんだけどなぁ……おっ来た来た。あれだ。」


 ギルド長が指さすので、つられてその方向に視線を向けると確かに2台の馬車がこちらに向けて近づいてくる。

 ほう?中々に立派な馬車であるな。流石は王都の馬車だけはある。

 馬車は吾輩たちの目の前で停車すると、片方の馬車から3人――使者というやつであろうか――が降りてきて、一列に整列し、一番初めに馬車から降りた細い体格をした眼鏡をかけた真面目そうな顔をした男がギルド長に向かって深々と礼をした。


「初めまして、アステルニのギルド長バジット殿。お会いできて光栄です。」

「そいつはどうも。お前らがこいつらを護衛してくれる連中でいいんだよな?」

「いかにも。私はロディン。王都の騎士団の者です。――ほら、お前らも!」


 ふむふむ、真面目礼儀男はロディンであるな。装備も服も一切着崩さず、ぴっちりとしているであるな。堅苦しそうなやつであるし騎士団というのがなんとも似合うであるな。

 次に前に出てきたのは、ロディンとはまた対照的な、ツルツルピッカの筋肉もりもりマッチョマンであるな。


「俺ぁガゾッドだ。同じく騎士団だ。」


 こいつは絶対脳筋であるな。絶対考えるより殴ったほうが早いとか思っているそういうタイプである。

 こうもわかりやすい脳筋は初めて見るであるぞ吾輩。

 お。最後に出てきたのはローブを着た紫髪の女であるな。


「どおもー!ギルド長さーん!私はニーフィ!よっろしくねー!」


 ――あぁ、これが空気が凍るというやつなのであるな。吾輩、初めて体験したであるぞ。

 まぁ、正確に言えば固まったのは吾輩らだけで、騎士団のロディンとガゾッドはやれやれとでも言いたげに頭を振っている。

 毎度のことなのであるなこいつ……

 やっとのことで我に返ったギルド長もしどろもどろながらも挨拶を返した。


「し、失礼しました、バジット殿。見ての通りニーフィは変わり者でして……実力は折り紙付きなのですが……」

「えぇー!ロディンくんひっどーい!私のどこが変わり者なのー?」


 いや、絶対に護衛役に向いてないであろうよ、この変わり者。なぜ抜擢されたかすごく気になるのであるが。やはり実力なのであるか?

 少しというか、かなり特徴のあるメンツを王都は寄越したものであるな……自信があるのか、はたまた面倒な奴らをわざと送り込んだか。

 

 まぁあちらが挨拶をしてこちらがしないのは話にならないので、こちらも――といっても吾輩は話さず、吾輩の名乗りはコーリィに言わせ全員の自己紹介を終えた、

 騎士団連中のなかで最も関心を集めたのは……いうまでもなく吾輩であった。3人とも3様に警戒・値踏み・興味とばらばらの視線を吾輩に向けた。


「これが件の魔物……なるほど、確かに見たことがない。」


 ロディンのつぶやきにほかの2人も静かにうなずいた。いやまて、ニーフィは静かにうなずくキャラじゃないであろう!?

 くそっ、直接話しているわけじゃないのに、こいつにひっかきまわされてる気分である。


「――気になることは多々ありますが、私が考えたところでたかが知れてますね。やはり王都で調べてみない限りは……では、みなさんお乗りください。道中魔物が出たとしてもみなさんは戦う必要はありませんからね。私共が戦いますので。」


 吾輩たちは言われるがまま馬車に乗車し、座っていく。

 おぉ、これはいい素材を使っている椅子であるな。座り心地抜群である。


「じゃあ元気でな!たまには顔見せにこいよ!」


 こうして吾輩たちを乗せた馬車はギルド長の別れの挨拶を背に走り出した。

 王都で一体何があるのか、楽しみであるな。

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