第14話 ワイバーンの見積もりである
「へぇ、本当にワイバーンだ。ふむ、サイズは普通レベルだね。肌に複数の切り傷ね。」
このままだと話が進まないと危惧した吾輩は早速ワイバーンをニアの眼前に置いた。
突如現れたワイバーンの死体にニアとマキリーは目を見張ったが、ニアはすぐに顔を引き締め、査定に入った。
その表情は敏腕の商人のそれであり、先ほどまでの痴態は嘘のようである。……いや、もはや別人じゃないであるか?
というか今、気になることを言っていたであるな。肌に複数の切り傷であるか?吾輩がワイバーンにした攻撃はグラビティと猫パンチとウィンドカッターのみのはず。爪での攻撃は一度もしていなかった筈である。
このワイバーン、吾輩らと遭遇する前に別の誰かと対峙していた可能性があるみたいだ。まぁ誰かと闘っていようとどうでもいいのであるが、一応、気にしておくである。査定も終わったようであるしな。
「ふぅ……まさかここに来てワイバーンの査定をするなんてねーそれもマジックボックスから出てくるなんて。――ネコくん。それ売る気ない?結構な大金を出すつもりなんだけど」
「ないである。」
「それは残念。」
まぁこんなワイバーン丸々一匹が入って実はまだ余裕で他のものが入りそうなマジックボックス。大量の荷物を運ぶことのある商人からしたら喉から手が出る程欲しいものであろう。だから大金を出すとは嘘では無い筈である。
しかし、このマジックボックスはクシャルダにもらった大切な物である。便利という事もあるが、おいそれと売れるものか。
「で?このワイバーンは売れるであるか?」
「問題ないよ。状態も悪くないし、サイズも小さすぎるわけじゃないから十分な素材を確保できる。ネコくんは全部売るつもりなのかな?」
「いや、肉と皮、あとは骨を少しいただきたいである。」
「あれ?魔核はいらないのかい?」
「……?何であるかそれ。」
「「「「「「「ええっ!!??」」」」」」」
え、何で皆そんなに驚いているであるか?そんな当たり前のものであるか?その魔核とやらは?
ニアに説明してもらうと、魔核とは魔物の人間でいう心臓に値する部位で魔力が詰まっているらしい。その大きさは魔物の種族というより個の強さによって大なり小なり異なり、中に詰まっている魔力の分価値が違ってくるらしい。
「まさか魔物に魔核の説明をする日が来るなんて思いもしなかったよ……?ネコくん、君は本当に魔物なんだよね?」
「人や獣人に見えるであるか?」
「見えないね。だからこそ不思議なんだけどなぁ……で?魔核、どうするんだい?」
「そうであるな、売らずにもらっておくである。」
もしかしたら意外な用途があるかもしれないであるからな。またはコレクションとして集めてもいいかもしれぬな。
「了解了解。えーっとそれじゃあまぁ大体このワイバーンを買い取るとして見積もると――と、お金の説明もいる?」
「うむ。」
ここまで来れば乗り掛かった舟だとばかりに吾輩の非常識さに呆れた様子でニアは説明してくれた。いやぁ、まぁ確かに非常識であるな。教えてくれるのは素直にありがたいである。
一通り聞いたところで分かったことがある。
割と日本と変わらない貨幣単位であったであるな。
まず、銅貨は3種類ある。小銅貨・中銅貨・大銅貨があり
次に銀貨、これも3種類で小銀貨、銀貨と大銀貨がある。
銅・銀貨と来ればもちろん次は金貨の出番であるな。金貨も3種類存在し、小金貨・中金貨・大金貨。
そして白金貨。これは1枚でも大金貨10枚以上の価値はあり更に上の大白金貨となると考えるのが面倒である。……噂によるとそれ以上の貨幣もあるとかないとか?
それはさておき、この世界では紙幣が無い代わりに硬貨が流通しているのであるな。
「なるほど、よく分かったである。」
「何よりだ。それでは改めて見積もると……ざっと大銀貨2枚ってところかな?ネコくんに渡す分を含めるとするならば、6枚は出せるとは思うんだけど。」
「いや、それでいいである。」
「分かったよ。で、買取はいいんだけど、ちょっとここで問題が発生するんだ。」
問題であるか?別に吾輩は買取価格に納得しているしこれといった不満はないである。もちろんギィガは吾輩の獲物だから決定は任せると言っていたから異論は無い筈である。
「いや実はね。その買取をするための解体なんだけど、私もマキリーも全くできないんだよ。だから買取は街に帰って行いたいんだけど……」
「すみません。私、剣を扱うのは得意なのですが、何分解体となるとこう見えて大雑把な私には向いていないので。」
うん、こう見えてってどう見てもマキリーは大雑把だと思うである。
要するにここで買い取ることは不可能で街じゃないと難しいと。
最初からワイバーンがあると知っていれば解体できる者をよこしていたかもしれないが、急だったであるからな。そこはしょうがないである。
それに街で買取となったとしても別に問題はないであるだって――
「構わんである。吾輩がニアたちに同行して街に行けばいいだけであるからな。」
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