第585話 一生懸命やってるんです…はぁ?

 バイト先の『爪水虫』

 ついに清掃から外された。

 あまりに遅いからなのだが、本人は反省していない。

 そこでリーダー考えた。

「そうだ、鍵開けを覚えさせよう」

 鍵開けとは退室した部屋の連絡をフロントから受け、客室のカギを開け、ゴミを回収しつつ、忘れ物等をチェックし清掃前の準備をする役割である。

 要領よく清掃に指示を出さないと、清掃が滞るのだ。

 皆が思った。

「無理だろう…」

 無理だった。

 清掃への指示はデタラメ、ゴミはそのまま…客がいるのに鍵を開けちゃう。

 清掃に指示し忘れて2フロア未清掃とか、まぁ思いつく限りのミスを連日連発する。

「止まらねぇな…この女」


 しかし…本人は、なぜか楽しそうなのだ。

 人に指示するのが気持ちいいらしい。

 権力を持ったバカって感じだ。


 で…時々、リーダーに怒られる。

「一生懸命やってるんです」

 泣くのだ。


 つい言っちゃった。

「一生懸命にミスしているってこと? 謝る時に一生懸命なんですとか、じゃあ、それが限界値って思えってこと? それを伝えてどうするの? だから大目に見ろってこと? そんな勤務態度在り得ないよね」


 自分の部下なら、怒鳴ると思う。

「あぁ…本職の方で私、課長になりました」

 

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