○○の日
「ねぇ、今日はなんの日か知ってる?」
顔だけを覗かせて楽しそうに聞いてくる。
「なんの日って…そんなに大事な日なのか?」
「ふふん、今日はね。じゃーん!!なんとメイドの日なのです」
そう言って
ふわりと舞うスカートから覗く脚。そして普段とは違う印象に思わずドキッとしてしまう。
「どう?メイドさんだよ。おかえりなさいませ、ご主人様なんてね」
「えっと…どうしたらメイドの日になるのか教えてもらってもいいか?」
あまりの可愛さと突然のことで回らない頭を必死に回転させて考えてもメイドの日にはならないのだ。
バレンタインデーのようにこの日と決まっているのかそれとも猫の日のように語呂合わせなのか…
「え?多分ね、五月がメイで10日をドって読んでメイドの日なんじゃないかな?」
「なんじゃ、そりゃ」
「だって私もツチッターで知ったんだもん」
そういって携帯の画面を見せてくる。
そこには肌色成分の多いメイドさんのイラストが写っていた。というか、ハダけてる。胸とか丸見えだよ。
「見せる画面間違ってないか?」
美弥にそういうとキョトンとした顔をされる。
いや、まぁ…こういう彼女だとわかってはいたけど。
「あ。もしかして…期待した?」
なんて言いながら短いスカートをたくし上げていく。
あと少しで下着が見えるというところでデコピンを食らわせる。
「アホ、そういうのは気軽にするもんじゃない」
「相変わらずお堅いんだ〜」
「お堅いんじゃねぇよ。お前が大切だからだっての」
そう言ってやると顔を真っ赤にして黙ってしまう。
「平気でそんな事言うなんて…恥ずかしくないの?」
「ん?なんか言ったか?」
「な、なんでもないよ!!あ。そろそろご飯作らないと。コウは洗濯物の方お願いね」
そう言ってあっという間に部屋から出て行った。
別の日。晩御飯も食べ終わりソファでゆっくりしていると背後から美弥が声をかけてくる。
「コウ、今日はなんの日だと思う?」
「なんの日ってそんなになんかの日があるのか?」
ついこの間はメイドの日だった。それならまたメイなんたらの日になるのか。
なんて考えていたのだがまったく思いつかない。
すると美弥が隣にやってきて座る。
「ヒントはね、今の私の服装だよ」
そう言われて美弥の服装をじっくり見る。しかしいつも見る美弥の服装だった。
「いつも通りにしか見えないんだけど」
「ダメだねぇ。正解は…ストッキングの日だよ」
そう言って美弥はストッキングの履いた脚を上げる。
思わず美弥の脚に魅入ってしまう。
いやそりゃ、好きな人のそう言う部分なのだからみてしまうのだが…
「わかったからその脚をおろそうな?危ないから」
素直に脚をおろして寄りかかってくる。
「んー、今度はコウがなにかやってよ」
「なにかって…」
そう言われてカレンダーを見る。
(あ、そうか。もうすぐあの日か。なら…)
「そうだな、気が向いたらな」
そう言って今は誤魔化した。
ある日の晩御飯。
普段なら喋るコウが静かにご飯を食べていた。
流石に耐えきれなくて私からなにか話題を出そうと思っていたら突然コウが口を開いた。
「なぁ、今日はなんの日か知ってるか?」
「え?なんの日って…」
必死になって思い出そうとするけどなにも思い出せない。
なにか大切な日だった気がするのに…
「わからないのか?」
「え?え?」
慌てて思い出そうとするが慌ててる時ほどわからなくなるものだ。
「ほれ、これ」
コウが出してきたのは小さな立方体の箱だった。
そうして…
「美弥、今日はな俺とお前が付き合い始めた日。そして俺がお前にプロポーズする日だよ」と言った。
箱を開けるとそこには指輪が。
あまりの事に頭の中が真っ白になる。
「結婚しよう。美弥」
あまりの出来事にもうなにも考えられない。
え?え?私。今プロポーズされた?
なんて思った瞬間、涙が溢れてくる。
「ちょ、泣く!?」
私が泣いてるのを見て慌てるコウ。
それをみて私は慌ててコウの手を握る。
「ご、ごめん!ちょっとわけわからなくて…ありがとう!!私をこれからよろしくね」
「つまり…」
「はい!結婚します!!コウと結婚します!!」
大きな声でそう宣言するとコウが真っ赤になる。
「そんな大声で宣言しなくても、恥ずかしいわ」
「えへへ、嬉しくて、つい」
この日、私のお付き合い記念日が結婚記念日になったのです。
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