第8話 貴族会議

 ギバムントは、自分の大きな屋敷の中で一番広い部屋で、仲間内の貴族達を集めて、会議を行って居た。長いテーブルを前にして、椅子に座った貴族達が10人。会議の内容は、主に自分達の支配する領地の税率や、公共事業の話し合い等である。そして、会議が終わりに差し掛かった頃。

「次の議題ですが。例の件。つまり、あの娘の事です」

貴族の一人がそう言って、話を切り出した。

「ああ、あの王子が庇護している少女の事か。あの娘に会った事があるが、実に無礼な娘だ」

貴族達は、エリスの事が議題に上がると、次々に彼女事を避難し始めた。まるで、大貴族ギバムントの機嫌を伺うようにである。

「皆も知ってるようだが。例の絡めては、失敗に終わった。なんと、あの娘は、我々の妨害を受けてなお、治水工事を成功させてしまったのだ」

「それでは、まるであの娘の地位固めに我々が協力してしまったようなものでは、ないか」

貴族達は、口々に失敗に終わった計画の責任が誰が取るのだとか、他の手を考えるべきだとか、一斉に語り出して収集がつかなくなってしまった。それを見たギバムントが声を上げる。

「皆さん、静粛に!! 誰か、あの小娘を失脚させる良き案は、ございませんか?」

ギバムントがそう告げると、会議室は、静まり返った。ほんの少し、静寂が部屋を包み込んだが、角の方の一人の貴族の声が静寂を打ち破ったのである。

「やはり、絡めてでは、弱すぎたのです。今度は、強硬手段を取るべきでしょう」

「つまり、命を狙えと?」

ギバムントが大きく目を見開いた。

「近々、国境付近に出没する盗賊団の掃討作戦があります。それにあの娘を借り出せば、どうでしょう?」

「しかし、まだ少女であるあの娘を戦場に連れて行くとなれば、それなりの理由付けが必要でしょう」

「まあ、最初は、書記係とか、後方待機の隊に入れておき、現場で、隊を再編成して、あの娘を最前線に送り出せば良いのです。なにせ、戦場ですから、何が起こるか解かりません。何も起きなくても、暗殺してしまえば良いのです。死んだ理由など、後からでもなんとでもなるでしょう」

一人の貴族が言ったその言葉にギバムントが頷き、その計画が実行される事がこの会議で決まってしまったのである。

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