第49話

「ううん、けど、師匠が悪徳セールスお断りって」


「悪徳じゃありませんって。私は、貴方に、安心と安全を提供しに来ているんです。いいんですか、そんな呪いにびくびく怯えながら暮らす毎日、本当に楽しいといえるんですか」


「それは」


「当社の保険に入れば、一生、呪いに怯えずに生活できるんですよ。こんなに素晴らしいことってあるでしょうか。月々たったの0.1ゴールドで、この幸せを享受できるのだと思えば、安い買い物だと思いませんか?」


「一日たったの0.1ゴールド」


 考えこむノエル。


 前にも言ったが、この女こそは、大陸で最も恐ろしい存在歩く魔法爆弾である。彼女の生命を脅かすような危険など、この世には存在しない。


 そもそも論として、彼女の身体には、あらゆる魔術や呪いを跳ね返す、強力な呪文がかかっているのだ。


 本来、それ保険は、彼女に必要のないはずのものである。


 だが。


「師匠みたいになるのは、ちょっとなぁ」


 目に見える胸囲に、いささか、彼女も焦って結論を間違った。 

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