第25話 テイヌシュ大会 Ⅲ
新たなスキル、
「まさか、そんな能力を隠していたなんてね。もしかして、途中まで手を抜かれてたのかな? だとしたら、不愉快だな」
ヨイチは手を抜かれたと思ったらしく、機嫌が悪い。まあ、そう思われてもしょうがないか。
「いや、この能力は、ギリギリまで追い込まれたからこそ発現したんだ。俺自身こんな能力が自分に眠っているなんて知らなかった。ヨイチのおかげで俺は強くなれたんだ。仲直りとお礼をかねて、ハグしてもいいかい?」
「そういうことなら……そうだね。僕も昇君の役に立ててうれしいよ。じゃあ、僕を抱きしめて?」
「ああ、ヨイチ、ありがとう」
俺たちは優しく抱きあった。
「うにゅ~。頭も撫でて~」
ヨイチが上目遣いでかわいくおねだりしてくる。ヨイチの汗の香りが不思議と心地よく、なんだかムラムラさせる香りだ。そのうえ、運動後の火照ったヨイチの身体はむんむんしていて、妙にエロチックだ。俺は必死に理性を保った。
「今は、みんなが見てるから、また今度ね」
「む~。約束だよ!」
「ああ、約束だ」
ほっぺたをぷくっと膨れさせているところもかわいいヨイチを納得させて、コートを出る。休憩の後、決勝戦だ。決勝戦は5セットマッチで、先に3セット取った方の勝ちだ。決勝の相手は……エルファさんだった。
「まさか、決勝の相手がエルファさんだなんて。決勝に恥じない試合になるよう頑張ります。よろしくお願いします」
「ええ。よろしくお願いいたします」
エルファさんはにっこりとほほ笑んだ。サーブはエルファさんからだ。
「はっ!」
「なっ!?」
強烈なサーブはバウンドして、俺の顔めがけてとんできた。思わず避けてしまい、打ち返せなかった。偶然だろうか?
「昇様ならお顔に当たる心配はないと信じておりました。これで、安心して本気で打てます。ツイストサーブ! はっ!」
先ほどのサーブよりさらに強烈なサーブが俺の顔面めがけて飛んでくる。打ち返そうとしても、体が勝手に反応して、避けることを優先してしまう。簡単に1ゲーム取られてしまった。
気を取り直して、俺がサーブを打つ。エルファさんの返球はコートから大きく外れた。もしかしたら、サーブ以外は苦手なのかもしれない。そう思って油断した。
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