第3話僕という人間について

まず僕という人間のことを説明しておかねばならないだろう。

これから話すそれぞれの話を聞いて僕という人間を知っているか、知らないかで僕に対する親しみやすさは大きく変わってくるだろうから。


僕の年齢は28歳だ。会社では若手とはもう言えないけれど、中堅とも言えない、微妙な年齢だ。

そう、僕はしっかりと就職してしまっている。もう入社7年目だ。はっきり言って仕事は嫌いじゃない、むしろやりがいを感じる時も多々ある。


そもそも、こんな僕が偉そうに語って悪いが、小説家になりたい、と思う人は、まずは通常の、いわゆる目の前の仕事を一生懸命やってみるべきだ。

どんな仕事も一生懸命やれば楽しみを見つけることができるし、小説家よりもよっぽど安定している。


だから僕は何度も言うが、決して小説家を目指しているわけではない。僕は小説を書きたいだけなのだ。


さて、ここで少々矛盾点が生じてくる。僕は人生の中心として『すべての世界』の完成を目指しているのだが、小説家になるのは断固して否定している。

ならば、その小説を書くのは誰のためだ? 当然それは僕のためだ。

人に読ませない小説を書く意味なんてあるのだろうか? それに人生の中心として執筆することを掲げている割には、1日の中で執筆に使える時間なんて1時間にも満たない。


僕はこんなふわふわとした論理の中で『すべての世界』を書こうとしている。

けれどそれが僕であり、彼女であり、僕にとっての小説なのだ。

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