洗脳メイド

第37話 ～大事な事～

「とり憑いていた蟲を克服させたせいで見えるようにしてしまった、か」

「そうなんだよ。まさか見えるようになるなんて」

「俺も知らなかった。けどすごいな朱火。普通じゃできないぞ」

「ま、そのせいで今回のような事が起こるようになってしまったけどね」

　嫌な思い出だ。

「ところでさぁ、ビリニュス」

「何？　ティラナ」

「ホントにそれだけで終わったの？」

「「！！」」

「あ！　まだ何かあったでしょ」

「まぁもう一回会ったけど、その時は別に何も無かったけど」

　もう一度会った事は話すがこれ以上は話したくない。

　なるべく悟られないようにしないと！

「本当なの？」

　今度は先輩が聞いてきた。

「もちろんです！」

「……そう」

　先輩が私の両肩に手を置いた。

　こ、これは！　記憶を探るつもりか！

　私は先輩から離れて手を払った。

「やだなぁ。私の言葉が信じられないのですか？」

「一応ね。何か隠しているかどうか」

「どうしてですか？」

「私達に今までの貴方達の事を聞いた時、さっきの生徒の存在を話さなかったじゃない。重要な事だったのに」

「その事に関して申し訳ありません！　でも大丈夫です。他に隠している事はありませんから！」

　探られたらどんな事を言われるかわからない！

「……ま、いいわ。人の記憶を探る事なんて本当はしたくないし」

　助かった。

「けど、これからは大事な事はちゃんと伝えるように！」

「わかりました！」

　肝に銘じよう。

「じゃあね朱火、ビリニュス。駅はこっちだから」

「バイバイ朱火ちゃん」

「さようなら。先輩、桃音ちゃん」

「じゃあな。ビリニュス」

「バイバイ」

「気を付けて帰ってくださいねー」

　私達はそれぞれの家に向かって帰って行った。