夜の森の只中で赤々とした椿の花を食べた

夜の森の只中で赤々とした椿の花を食べた

その花弁を一枚一枚唇で押しのけて

そのおしべを舌で舐める

花粉が舌の上でざらざらとしている

その匂いに頭がぼんやりし始める

歯で花びらを食いちぎる

苦い植物の匂いがする

むせ返るような若葉の匂いがする


夜の森の只中で赤々とした椿の花を食べた

口の中が灰色に染まる

月の明りがそれを照らす

口の中から

美しいとも

醜いとも

いいがたい

液が滴る

私は表情も変えずに

夜の森の只中で赤々とした椿の花を食べた

くっちゃらくっちゃら

その花を

くっちゃらくっちゃら

オト立てて

夜の森の只中で赤々とした椿の花を食べた

むっしゃらむっしゃら

めしべをちぎる

むっしゃらむっしゃら

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