第7話

「お姉……さん?」


「そう、お姉さん。数年前お亡くなりになったけどね。


そのお姉さんと口論になって、家出したこうた君を探しているときに、交通事故に巻き込まれたんだよ。


最後に、こうた君は、お姉さんに『大嫌い』って言ってしまったらしい。


それを謝罪できずに、お姉さん亡くなったことを心残りに思っていて、お姉さんに言われた「賢くなりなさい」、「強くなりなさい」って言葉を実行するために努力してきたらしい」


あいつにもそんな過去が……。そんな風に、哀れむ前に、引っかかるところがあった。


聞いたことあるところがあった。


『わからず屋のお姉ちゃんも大ッ嫌いだ!!』


今朝見た夢の言葉を思い出す。


それでこうたは飛び出して、アタシは追いかけようとした……。


あれ? 全く同じ状況じゃないか?


なんで? 一体、どういうことなの?


完全に視界は真っ白になり、息が詰まって呼吸しづらい。


「そういえばお姉さんの名前はと……」


そう言って、担任は、紙にこうたのお姉さんの名前を書き始めた。


別に、その人の名前を教えるつもりはないのでは?


そう思ったが、担任の渡された紙を見る。



あらゆる言葉がアタシの脳から飛び去っていくのを感じた。


「お前、この人の名前知ってるだろ?」


そこに記されたのは、「篠田かおる」の文字……。


知っている。


忘れることのない名前。


命の恩人の名前。


四年前、アタシは心臓の病を患っていた。治る確率は天文的確率に等しいと言われた。


でも、アタシは、ほぼ完治し、こうして生きている。


なぜか?


彼女の心臓が移植されたからだ。


その弟の顔を、アタシは初対面から見覚えがあった。


そして、思い出す、あゆみの言葉。



『脳以外の臓器で記憶が保存できるらしい』



そうか、アタシのあれは、時間旅行タイムリープというよりむしろ、記憶転移によるフラッシュバックだったんだ……。









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