第5話

体育の時間。


今日は、体育館でバスケをする。


男女混合で、チームを作り、勝ち残りでゲームをする。


こうたは、運動神経が良く、ドリブルでバスケ部すらかわして、ゴールに近づく。


そして、そのまま、ゴールに……放つことなく、近くにいる同じチームの女子優しくパス。


女子がゴールを外してしまい、「ごめんね!」と言うと、「ドンマイ、ドンマイ」と笑顔で慰めた。


それを、ステージの上で、体育座りで見学するアタシ。


そのリア充行為によって、さらにこうたにイライラしてきた。


ビーッ。


終了のブザーが鳴る。こうたは、ステージに置いたバックに向かって小走りする。


「お疲れ様」


「本当に、疲れた! こんなガチな体育久々だよ」


こうたは、カバンからタオルを取り、汗まみれの顔をふく。


「てか、なんでアンタ、アタシの近くにバック置いたのよ? 気でもあるの?」


「そうやって、何でもかんでも恋愛に関連させるなんて、お前は中学生かよ? そう思うお前こそ気があるんじゃないのか?」


「殺す気はあるわよ……」


「俺が悪かった。だから、その悪意を含んだ笑顔はやめてくれ」


アタシは握った拳をおろす。


それにしても、小学生の頃は、喧嘩に弱くて、鈍臭いやつだなと思ったのに、今は、体つきいいし、運動できるやつになっちゃったな。


なんだか、こうたじゃないみたい。いつから、こんな変わっちゃったんだろう?


それを知りたいけど、時間旅行タイムリープは、アタシの行きたい時間、場所に移動しない。


それにここ一週間くらい見てないからな……。


「てか、なんでお前見学なの?」


こうたがしれっとアタシに質問してきた。


「ドクターストップ」


「え? お前、病気なの?」


「病気だった、かな。手術して治ったんだけど、まだ完治じゃないらしいから」


「そうなのか……。ごめんな。何も考えないで聞いちゃった……」


顔を暗くして、こうたは謝る。


「気にしないで。どうせ、いつか話すことだろうと思ってたから」


また、ゲームのタイマーが鳴った。


「ほら、アンタのチームの番号だよ! 次のゲームでは、勝ってこい!」


アタシは、こうたの背中を強く叩く。


「おうよ! 勝ってくるわ!」


こうたは、笑顔で、親指を立てる。


こいつの暗い顔を見ると、なぜかアタシは嫌な気持ちになる。


でも、この明るい顔を見ると、アタシまで明るくなって、心臓が高鳴る。


アタシはゲームに向かうあいつに、手を振り続けた。


あいつの勝利を願って。







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