Friend's

桜雪

Prologue

「子供は寝る時間よ、ナミィ」

 母親が幼い我が子を寝室へ向かわせる。

「ママ…絵本を読んで」

 幼い女の子ナミィが母親にねだる。

「はいはい…」

 いつものように、ナミィをベッドへ寝かせ絵本を開く。


 昔々、この王国には悪い『魔石使い』がいました。

 魔石使いは、身体中に魔石を埋め込み、土から造られた兵隊を操り王国を乗っ取ろうとしたのです。

 王国の兵士や魔石使いは、力を合わせて悪い魔石使いを倒そうとしましたが、歯が立ちません。

 ある日、王国に伝わる魔法の剣を持つ剣士が、悪い魔石使いの前に立ちふさがります。

 剣士は、魔法の剣で悪い魔石使いを追いつめます。

 長い戦いの末、ついに剣士は、悪い魔石使いを封印することに成功したのです。


「封印って?なに?」

「うん…悪い魔石使いは、大きな魔石に閉じ込められたのよ」

「それで、どうなったの?」

「大きな魔石は王国の地下にあるのよ…そして、この国のために永遠に魔力を生み続けるの…ほら、この部屋の光も、街の明かりも、全部その魔石が造っているのよ」


 母親が窓を開けると、街は宝石を散りばめたように様々な色の光が溢れる。

 暗闇を切り裂くように天に立ち上る、お城の光。


 その発展ぶりは他国と比ぶべくもない魔法国家。

 月の光を打ち消すような魔力の光。


 ウトウトと眠そうなナミィの髪を優しく撫でて呟く。

「あなたも10歳になったら、お城で魔石使いになるのよ…あなたには魔法力があるのだから…」


 これは絵本には書かれていない、この国の真実の物語。

 小さな名も無い村から始まる、魔石使いと剣士の物語。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る