第11話『厨房』

「ということは・・・あれが出来るはずだ!」

と僕はさらに思考を進める。

そう、この世界観にはもう一つ重要な要素がある。

そのことに僕は気がついたのだ。


「次はあれをためそう・・・!」

と、僕はアスカに言った。


-


「あれってなに?」

とアルテミスタ国の第一王女、アスカが僕に聞く。

それはそうだろう、『あれ』では通じない。

しかし、僕はそれに答える余裕がなかった、『あれ』をやるための素材を考えなければならない・・・。


「でもその前に・・・火が欲しいな・・・」

と僕は、アスカの質問に答えるより前に考えを進める。

そう、『あれ』を試すには何か分かりやすいものが必要だ。

そして、火が一番分かりやすい。


「火?そうねぇ、厨房でも行く?」

と、アスカが言う。

彼女は特にちゃんと返事をしない僕に怒るでもなく、必要そうな場所を提案してくれた。

そのほうがおもしろそうだ、と思ったのだろう。


「厨房!それだ!!」

と僕は、アスカのアイデアを喜ぶ。

城の厨房ともなればかなりの火力を扱っているだろう。

ぜひともそれがほしい。


「じゃ、行きましょう!」

とアスカは僕の腕を引いて、どんどん進んでいく。

彼女は護衛のリリィやユリカを撒いて僕のところに来ているが、特に、見つかることを恐れている様子はない様子だ。


見つかったら、ごめんね、てへ!ですますつもりだろう。

アスカのキャラクター的に・・・と僕は思っていた。

さすがになかなかの胆力である。


「こんにちわー!」

と、アスカが堂々と挨拶して、厨房に入っていく。


「こんにちは!って姫様!またこんなところにきて!」

とコックらしき人が言う。

『また』という単語から彼女の普段の行動が想像できた。

単独行動はいつものことなのだろう。その度にみんなに怒られていそうだが、めげないのだろう。


「ふふ!お父様には内緒よ!」

と口に人差し指を持ってきつつ、ウインクしながらコックに言った。


「まったく・・・私は見なかったことにしますからね」

と、言いながら、そのコックは別のところに言ってしまった。それでいいのか・・・とは思うもののたぶんいっても聞かないのだろうな・・・と思った。


そんなことを考えている僕をよそに、彼女はどんどん進んでいった。

バチッと機材を操作して、彼女は火を出した。


「はい!火よ!」

とアスカはこれでもかというくらいの満面の笑みで僕に言った。


「さすがアスカ!」

と僕は言う。


ここに来たのは一度や二度じゃないのだろうな・・・

と思った。

機材の操作に慣れすぎている・・・。


「じゃぁ、やってみる・・・」

と僕がいいながら息を大きく吸う。


そう、これからやることには少し覚悟が必要だ。


「え?ケンゴ何をするつもりなの?」

と、アスカが僕に聞く。

そう、なにか普通じゃないことをやろうとしているのは、その動きから分かったらしい。


「こうするんだ!」

と、言いながら僕はスキルを発動させた。

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