幸せになろう
夕食を終え、史月と交代でお風呂に入ったひなこ。1番風呂は史月と決まっているらしい。
御社のお風呂は大きなヒノキ造りで、泳げそうなほど広かった。今まで史月しか入ったとはないということだったため、もったいないんじゃないかとひなこはパジャマに着替え髪を乾かしながら思った。
冷たい廊下をぺたぺた素足で歩き、せっかく温まった身体が冷え切りそうになりながら史月の部屋の蝶が飛び交う襖を開けた。
先に風呂から出ていた史月が寝巻の黒い布地に赤い蝶の飛んでいる浴衣を着て、座椅子に座ってぼんやりと肘をついていた。
「あー、お風呂気持ちよかった」
「そうか、よかったな」
「いっつもあんな大きなお風呂使うとるん? 贅沢やねぇ」
「・・・そうか?」
「そうやで」
どことなく楽しい気分になってくすくす笑いながら史月の正面の座椅子の腰を下ろすと、史月はひなこの後ろ側、金の花の襖を指さして、言った。
「寝る準備、出来てるぞ」
「え、本当? 自分でお布団敷かなくてええの?」
「女中の仕事だ」
「まじか。じゃ、うちもう寝るわ」
「じゃあ、俺も寝る」
疲れたと自覚すれば途端に重くなる正直な身体。それにひなこが苦笑すれば、史月が立ち上がって電気を消そうと下がっている紐に手をかける。
ひなこもあわてて立ち上がり、金の襖へと手を伸ばした。
いまさらだが。
「うち、ここで寝ていいん?」
「花示と花祝は寝るときも一緒だ」
「そうなんや」
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