第557話(7-40)青髪の侍女と、特別列車の到着
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クロード、アリス、ガルムが織りなす三重奏の連携攻撃で、全長二〇mに及ぶ〝
ドラゴンの頭部をたてがみのように飾った毒花も、骨格や神経を維持する毒蔦や毒糸も、四肢にびっしりと寄生した毒茸や毒羽根も、肉体を守る毒の鱗も……。
クロードが振るう雷の刀と炎の脇差し、アリスとガルムが作り上げた〝門の結界〟によって焼却され、消滅したかに思われた。
「まだ、だっ。愛しい幼馴染をこの手に抱くまで、俺のガルムを取り戻すまで、俺は絶対に死なない!」
しかし、カミルは全身の九割を消失しつつ、わずかな肉片となって逃亡する。
「お前、しぶといにも程があるだろう?」
三白眼の細身青年クロードは、両手に握った打刀と脇差しから雷と炎を発し――。
「粘着するにも程があるたぬっ」
アリスが黒髪からのぞく金色の虎耳を三角に立てつつ、渦巻く竜巻を放ち――。
「
ガルムが結界に加えて、街一角を包む大布を広げて飛散する肉片を阻むも――。
「いな、否、否だ。正義は不屈。正義は無敵。まだ俺には秘策がある!」
カミル・シャハトであった毒物は、ただ一滴の毒となって、街の外まで飛翔する。
「〝
「RE、れ、レボリューション!?」
そうして
「変革の時は来た。生きることにしがみつくだけの
「Revolution? れれれれれ、レボリューションっ!?」
赤いスライムが黒く染まる。
カビが果物を覆うように、泥水がワイン樽を腐らせるように。
カミルという毒は〝
「あぎゃぎゃ、間に合った。それでこそ、カミル隊長だ」
「辺境伯。貴方の命運もここまでね。運命は、
カミル・シャハトは、〝
「よくやった。〝蜘蛛〟よ、〝華〟よ。我々の
クロードはカミルの狂態を目撃して、呆れてものが言えなかった。
ガルムはがっくりと頭を伏せて尻尾を垂らし、アリスは黄金色の猫目に涙すらたたえている。
「た、たぬっ。クロードぉ」
クロードは震えるアリスを、胸の中へそっと抱き寄せた。
「怖いたぬっ、気持ち悪いたぬっ。恋って、愛って、あんな風になっちゃうたぬ?」
「ならない。そもそもアレは一方通行だ。カミルの想いは、決して幼馴染みに、そしてガルムちゃんに届かない」
「ワウ」
白銀に輝く大犬ガルムもアリスに寄り添って肯定し、鎧に変化して彼女を守る。
「アリス、ガルムちゃん、作戦は成功だ。レアが援軍を連れて来てくれた」
カミルの哄笑を切り裂くように、ボオオオっと汽笛の音が鳴り響いた。
「ちい、ニーズヘッグ対策に、魔力以外の燃料を使ったか。雪の中をよくもパダルまで辿り着いた。だが。悪徳貴族よ。お前達の希望はここで断つ!」
カミルはその大きすぎる巨体で、駅と線路を踏みつけて軽々と破壊した。
駅舎が、線路が、悲鳴のような鈍い音を立てながらペシャンコになる。
「レールもハコも要らない。すべての束縛を壊すまで、俺の進撃は止まらない。絶望を直視した気分はどうだ? こんなもの俺の痛みに比べれば」
「ああ、〝お前が〟罪も無い民衆に与えた苦痛を思えば、胸の痛みにも耐えられる。レア、決めるぞ。鋳造――!」
クロードが右手を突き出し、魔術文字を綴る。
同時に、中継都市パダルへ近づく機関車の中で、青髪の侍女レアも左手を前へ伸ばした。
「はいっ。
「イザボー隊長から応答。客車分離の準備は完了だ。生徒諸君、あの怪物に踏みにじられたヴァリン領の仇討ちといこうじゃないか」
トーシュ博士の呼びかけに、機関室にぎゅうぎゅうに詰まった生徒達は、情熱に燃えた顔でそれぞれの作業を始めた。
先頭を走る機関車は、後続の客車二〇両を切り離し……。
「特製炭投下、試作エンジンの圧力向上」
「非常弁を全閉鎖、魔導エネルギー
「三秒後に回路を開きます。三、二、一、はじめっ」
新たなる燃料投下と共に、エンジンが唸りをあげて
ゴリゴリと音を立てて機関車の先端部が開き、巨大な掘削装置、すなわちドリルが出現する。
「皆様、ありがとうございます。
ドリル付き機関車は走る。
駅が壊されようと、線路が無くなろうと、障害にならない。
なぜなら、クロードとレアが創るから。
列車の進む先に、砂利石が重なって道床となり、枕木が横たわり、
「
「あれだけの巨体だ、十字照準は一致している」
「教授っ。エネルギー
「生徒諸君。対衝撃、 対閃光防御! レア君、最終安全装置を解除した」
青髪の侍女は、トーシュ博士が封印を解いたスティックを押し込む。
「これが、
カミルは最初に毒をまくも、アリスとガルムの結界によって阻止された。
次に触手を伸ばして機関車を迎撃するも、ドリルによって引きちぎられた。
慌てて方向転換し、身体を組み替えながら逃亡をはかるも、レールと汽車はどこまでも追ってゆく。
「お、お前達は、諦めると言うことを知らないのかあああ」
「「気づくのが遅い!」」
―― ―― ―― ――
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
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