最近、仕事で忙しい神の愚痴
壱足壱 葉弐
全ての始まり、約3000文字
人間ってのは勝手すぎる
人間の住む地上界にはソーシャルゲームというジャンルが存在する。
多数のゲーマー達が課金をしてはガチャで爆死していくというかなり悲惨なゲームのジャンルであるが、そういうゲームにはよく神が登場する。
神達は律儀にもソーシャルゲームの為に体を張っている。
今回はゼウスにスポットを当てていこう。
神
「なあ、ゼウスよ」
ゼウス
「なんですか?神様」
神
「『ゴッドストライク』というゲームからお呼びがかかったぞ。ガチャ、でゼウスが当たったそうだ」
ゼウス
「……またですか。取り敢えず、影武者に任せておけませんかね?」
神
「まあ、ガチャ程度なら問題ないか。影武者にでも任せておこう」
ゼウス
「最近やばいですね。疲労が凄まじいです」
神
「今までのゲームに比べてやっている人口が桁違いに多いからな。それに、ソーシャルゲームというジャンルがかなりメジャー化してきたのもあって母数自体が増えてしまっている」
ゼウス
「以前までは許容できるシフトだったんですけどね……。そもそもおかしいんですよ!」
神
「なんだいきなりどうした?」
ゼウス
「なんでああいうゲームって私がプレイヤーの操作するパーティーにリンチされなきゃならないんですか!」
神
「まあ、名前からしてラスボス級だからなあ。仕方のないところはあるよな。だが、
ゼウス
「
神
「いや、あいつらはあいつらで大変らしいぞ。朱雀が呼ばれたら他の奴らも呼ばれるってことだからな。朱雀が呼ばれた瞬間の
ゼウス
「いや、笑い
神
「そんなこと言われてもなあ。良いじゃないか。リンチの後は仲間として使われるんだから」
ゼウス
「それがダメなんですよ!なんでリンチされた後に、心入れ替えて糞みたいな人間にこき使われなきゃならないんですか!」
神
「ゼウス、基本強キャラだからなあ」
ゼウス
「しかも、あいつらアレですよ!私をパーティーに入れたまま、ゼウス倒しに行くんですよ!私に倒される影武者をしてくれている神の悲惨さといったらないですよ!」
神
「せっかくゼウスの疲労を和らげるために影武者になってくれているのにな」
ゼウス
「彼らには同情します。結構な力を持つ神なのにもかかわらず、名前が有名でないため、ゲームに採用されない者達ですからね」
神
「まあ、ゼウスの影武者が務まるぐらいの強さだからな。かなり偉いに決まっている」
ゼウス
「人間に知られてないってだけでそんな仕打ちですからね」
神
「まあ、仕方ないな。そういえば、ゼウス、これが今回のゲームが要求する造形だ」
神は『ゴッドストライク』の『ゼウス』というキャラクターの設定を渡す。
ゼウス
「カッコよくできてるんでしようね?って、これ二頭身じゃないですか!」
神
「そうだな、今回は二頭身らしい」
ゼウス
「整形するのだって大変なのに今度は身長まで変えろっていうんですか!?」
神
「まあ、確かに毎回ゲームの要求する容姿になるために整形するのは大変だろうな。全部一緒にすればいいのに。だが、今回は二頭身で済んでよかった、と思うべきだと思うぞ」
ゼウス
「……どういうことですか?」
神
「『ゴッドストライク』というゲームはなかなかに自己中でな。性別まで変えられたという神が存在するのだよ」
ゼウス
「……例の件ですか。あれは恐ろしいですよ。性別まで変えられて、登場させられるなんて、そんな屈辱、絶対味わいたくないです」
神
「『ゴッドストライク』は歴史上の偉人さえ、容赦ないからな。性別変えるなんて日常茶飯事だ」
ゼウス
「敬う気が一切ないですよね……。戦うのに適してない人だっているでしょうに。これなら、ゴブリンらへんのモンスターの方が楽だったかもしれませんね」
神
「いや、案外そうでもないんだよ。あいつらは確かに星の数ほどいるから、シフト自体は凄まじいことにならない」
神
「だがな、あいつらはチュートリアルなどに呼び出され、攻撃すらさせてもらえず、ただただ攻撃されるんだぞ?あれはみるだけでも心が痛くなる」
ゼウス
「なんというブラック企業……」
神
「しかもな、ギリギリでレアなんかに登録されてみろ。ガチャを引かれるたび、外れレアとしてガチャから排出され、なんの役目も与えられることなく、売却や合成されるんだぞ」
ゼウス
「うわあ……」
神
「まあ、ゼウスのシフトが凄まじいのは周知の事実なんだがな」
ゼウス
「そうですよ!『ゼウス降臨』なんてイベントがあった際には、リンチされるために、三日間連続休憩なしで二十四時間働きづめなんてザラですからね」
神
「ブラックだなあ……」
ゼウス
「しかも、『ゼウス降臨』がある時にゼウスとゼウスの戦闘が多発するんですよ……。そのあと、合成なんてしやがりますからね。身内で戦わせた後、合成なんて人のやることじゃないですよ」
神
「スキルアップするためにその作業を必要とさせてるからなあ」
ゼウス
「まあ、女性化されなかっただけマシだということにしときましょう」
神
「そこに戻るのかよ。まあ、女性として登録されたゲームとはさっさと縁を切った方がいいな。女性として強キャラとして登録された際なんて地獄でしかないからな」
ゼウス
「女性としてそのゲームでは大活躍し、他のゲームと行き来するたびに、性転換を強いられる。強キャラだから出番もなくならない。地獄だなあ……」
神
「クリエイターは実体があるものには容赦しないからな。仕方ない」
ゼウス
「無情ですね……。そろそろ相対性理論とかが、キャラクターになっちゃうかもしれませんよ」
神
「あはは、それはシュールだな。ボスキャラが相対性理論か」
ゼウス
「まあ、ないでしょうけどね。そろそろシフトなんで行きますね。また愚痴りにきます」
神
「辛くなったらいつでも来い。私は抽象的すぎてどこからもお呼びがかからないからな」
ゼウス
「『神の中の神』、まあ、使いにくい事この上ないですからね。では、行ってきます」
神
「ああ、行ってらっしゃい」
***
数分後。とある来客があった。
?
「すいません、仕事が来たんで、ちょっと相談に来ました」
神
「入れ」
?
「すいません、お邪魔します」
神は入ってきた何かを見る。神としては見覚えのない顔だったが、それがなんなのかは大体予想がついた。
ケンタウロスのような上半身が人間で下半身が馬の形をした何か。手には弓を携えていた。
神
「お前、まさか……?」
いや、ありえない。神は頭の中でその先に言おうとしていた答えを否定する。
それには実体がないはずだ。それに仕事が届くはずがない。神はそう自分に言い聞かせる。
しかし、その考えは目の前にいる何かによって覆された。
?
「すいません、私、射手座なんですけども」
神
「ついに星座まで……!?」
神は驚愕で顔を歪める。しかし、それで終わりではなかったのだ。神は射手座の後ろに控えていた何かに目を向ける。
りんごが宙に浮いていて、それに顔が付いている。神には何故だか、宙に浮く不思議なりんごが何者か予想できた。
神
「おい、後ろのりんご、まさか……」
?
「あ、僕は仕事について相談しに来た万有引力なんですけど」
神
「なん……だと……!?」
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