幸せな未来



 それからきっちり2週間後──。



 玄関に仁王立ちする長身の男性が2人。

 お決まりのシチュエーションだがいつもの威圧感は全く無く、珍しくキョウスケまでもが目を丸くしていた。


瀬山せやまカスミさんです」


「はじめまして、瀬山です。ヒナタさんと真剣にお付き合いさせていただいています」


「女の子?!」


 自分が男性に対してさんざんしてきたことは棚の上にあげておいて、アオイは同性ということに驚き、心のままに声に出してしまった。


「何か?」


「あ、いや……」


 カスミは視線だけをアオイに移し、真剣な表情で問いかける。


 その進撃な瞳は、さながらキョウスケのようで本当にヒナタが言っていた通りだと思った。


 詳しい話はまた今度ということになり、ヒナタがいそいそとカスミを2階へ誘導する。


 兄2人はそれをじっと見送るしかなかった。


「女の子だったのか」


 アオイはなんともいいがたい気持ちを込めてぽつりと言った。女性には今までのような手段にでるわけにはいかない。



 何より───



「…アオイ、どうだ?」


「すっごい幸せそうな未来が見える、気がするよ」


「そうか」


「……うん」


「作戦終了、だな」


「…………うん」


 表情を変えないキョウスケとは対照的に、アオイの顔にはどこか寂しさが表れていた。


(これで兄貴への気持ちを忘れられる)


 チラリと見たキョウスケは先程とは違い口元に静かな笑みを浮かべていて、本当にヒナタを祝福している顔をしている。


 アオイが思わず魅入ってしまう穏やかな顔。


「……やっぱり無理かも」


 そう呟いて苦笑いしたアオイも、目の前にいる大切な〝同志〟と一緒にヒナタの幸せを見守っていこうと心に誓ったのだった。

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