遺跡へ
さて、悪魔の所為で綺麗な地底湖を眺める事が出来なくなった俺達は失意を難とか呑み込み、返り血塗れのアルレシアをきちんと川へと連れて行って汚れを落とさせてから先へと進む事にした。
で、だ。俺達一向に新たな仲間が加わった。
そう、ランドドラゴンの子供だ。
まぁ、仲間と言うよりは旅をするついでに元の住処まで送り届けるってだけだから、同行者というのが正しいかもしれない。
そして、この子の首には俺と同じように外観がライドセラスに見える首輪の魔道具が取り付けられている。流石にドラゴンが人の住む場所に行くと阿鼻叫喚に包まれるらしいので。丁度スペアがあってよかったよ。
一応、この子の大きさは大き目の大人のライドセラスと同じくらいらしいので、ライドセラスの外観をしても違和感はない。
あとは……そうそう、この子は雄だ。で、名前が無い。安易に渾名でも名前を付けてしまうとその名前に縛られてしまう可能性があるので名付けられない。まぁ、魔力が無かった俺とは違って、この子は魔力を有しているからその心配は薄いかもしれないけど、念には念を入れて、だ。
なので、このランドドラゴンの子を呼ぶ時はどうしても気を遣わなければならない。……箱庭の森の皆も、俺に対してかなり気を遣ってたんだろうなぁ。何か、御免。
まぁ、兎にも角にも。暫くの間はこの子と一緒に三人(一人と二頭)旅になる。
この国でランドドラゴンが住んでいる場所は奇しくも魔神の欠片が眠っている場所の近くだ。なので、このまま西に進んで行っても問題ない。
そして、この子が誤って起動させてしまった転移の魔法陣があった遺跡というのも、アルレシアはある程度目星をつけている。
ここから西にある遺跡は二つ。その内ランドドラゴンの生息域に近い場所に存在するのはファリアル遺跡だそうだ。
ファリアル遺跡は古代に栄えていた王朝の宮殿らしく、王朝が滅んでも壊される事はなかったそうだ。
山岳地帯に建てられた宮殿は当時争いが絶えなかった時代という事もあり、管理はあまりされなかったとか。ぶっちゃけ、そこまで赴く人員がいなかったとかなんとか。
下手をすればそこが軍の拠点ともなりそうだったけど、生憎と高低差の激しい山岳地帯故に物資の持ち運びが困難で、拠点には向いていなかったから使われなかったのではないか? という見解が為されているそうな。
で、戦禍に巻き込まれる事無く長らく放置され、外壁には蔦が這った御蔭で倒壊する事も無くほぼそのままの形で今も尚残っているとか。
剥落は見られるけど、それでも壁画とかは残っていて、当時の王朝の彫刻技術なんかも見て取れる歴史的価値の高い遺跡らしい。
けど、人里離れた高低差の激しい山岳地帯。更には近くには強力な魔物が生息。最悪ランドドラゴンと鉢合わせる可能性もあるので人が管理する事は出来ない。なので、今も尚野ざらし状態で、遺跡に訪れるのは調査目的や観光目的でランクAやBの冒険者を雇って遺跡に向かう者くらいだとか。
この子を母親の下へと送り届ける為。あとアルレシアがその遺跡を見てみたいという事もあってまずはそこへと向かう事にしたのだ。
このメンバーならドラゴン以外なら相手取れるっぽいので、そこまで危険な場所じゃない。この子の母親と遭遇したらきちんと事情を説明すれば襲われる事はない……筈。
もし襲われたら全力で逃げるしかない訳だけどね。その時はアルレシアに【魔力共有】を使って貰って身体を強化し一気に駆け出すさ。
道中はアルレシアの口ずさむ歌にこの子と一緒に乗ったり、時折現れる魔物を屠ってアルレシアとこの子の食事へと変貌させたり、盗賊が現れても慌てず騒がずぶっ飛ばしたり……と特に危険な事も無くスムーズに進む事が出来た。
途中で人の住む都市や村にも立ち寄った。そこで特産の野菜とかを俺はアルレシアに買って貰って食した。
個人的に印象に残ったのはサニーアップルと言う林檎で、甘さは控えめだけど目が覚めるような爽快感抜群の味わいだった。
因みに、サニーアップルはよく王都の学校に受かる為の試験勉強をしている人の夜食に持ってこいとか。……これって、栄養ドリンクと同じ扱い? もしくはコーヒー?
あとは口に含むとぱちぱちと弾けるハジケガキや口内に残った辛さを瞬時に洗い流す事が出来る果汁たっぷりのリフレッシュパインなんてのも印象深かったな。
ハジケガキは味や食感は柿そのものだけど、ぱちぱちっと口の中で踊る。それはさながら人間だった頃のおぼろげな記憶に残るぱちぱちと弾ける炭酸入りの飴が入った綿菓子が連想された。
リフレッシュパインもその前に間違って食べた唐辛子によって口内に広がった辛さが本当に一息で消え失せたのには驚いた。このリフレッシュパインは火傷にも効くらしいけど、生のパイナップルって確かタンパク質分解酵素があるからあんまり傷口によくないんじゃないかな?
と思ってたら一度煮た果汁を用いるらしいので、傷の治りが悪くなる事はなさそうだった。
そんなこんなで美味しい物を食べたり、観光名所に寄って見たりと満喫しながらそこそこ楽しく旅をして、漸く遺跡のある山岳地帯までやって来た。
…………のだが、ここに来て面倒事に遭遇してしまった。
俺達は山岳地帯の半ばで四対の翼を持つ悪魔とばったり出遭ってしまったのだ。
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