第30片 刀とジャポネ

ガラスケースのなかに鎮座して眠る

鈍色に光る刀身をみるとき

どこか恍惚として

夢見心地になってしまうのは

するどいやいばが

わが身をつらぬく瞬間に

どこか憧れがあるからだろう


だれかを刺す勇気はないから

だれかを傷つけてまで突き通す意志もないから

わたしはわたしを刺してみる


肉をぶち破り骨をきしませて

血がぎゅるぎゅると沸騰して

神経はぶちぶちときれて

暴れ出す内臓もきれぎれになって

やいばがわたしのなかを一直線に貫いてゆく


痛いだろうか

苦しいだろうか

わたしはわたしを刺して満足だろうか

懸命にからだを切り裂いて必死にかき乱して

その奥に何を見つけようというのか


剣ではなく刀で刺されたい

わたしはわたしに刺されたい

笑いもせず泣きもせずぐうの音も言わず

表層だけはまっさらに

やさしく無傷のままで


わたしはわたしをずぶりと刺したい




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