第9片 どんぐりの旅




どんぐりを見つけると

拾わずにいられないのはなぜだろう


ビビビッ、ビビビッ

きっと、拾わずにいられない

電波が出ているに違いない


どんぐりをポケットに入れ

赤いじゅうたんを敷き詰めた

秋の歩道をまっすぐに


さあ、ゆこう、軽やかに

どこへゆこう、目的はなし

足の向くまま、気の向くまま

ビビビッ、ビビビッ、ビビビッ


やがて人気のない公園に入り

黄色のじゅうたんの広間へ来て

おもむろにポケットを探り

ビビビッ、ビビビッ

なんとはなしに

どんぐりを、ぽーんと地に投げた


ころころと転がったどんぐりは

落ち葉のなかに埋もれて消えて

ビビビッ、ビビビッ……

あたりは急に静かになった


そうか、

お前はここへ来たかったんだね

親をはなれ、きょうだいと別れ、

ここで新たに根を張ろうと企んでいるのだね


ビビビッ、ビビッ…………

電波は途切れて、はいさようなら


何千回も何万回も何億回も

どんぐりは、拾われて旅をして


私はお前に操られて

気のいい運び屋になってしまったよ

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