真実少女の分からない嘘

美織

嘘で纏まる世界

「__なぜ、人は嘘をつくのだろう。」


 そう疑問を口に出す私、未菜。


 ここは、真実村……ではないが、私は少なくとも、そう思っている。


「それはね、自分を護るためだよ。」

「なんで?」

「………傷つくのが、恐いからよ。」

「未菜もいつか分かるわよ。」

「……はーい。」


 この人は、お母さん。いつも私に真実を教えてくれる。


 このときの未菜、小学校1年生。


 初めての学校。わくわくが止まらなかった。


 すこーし緊張したけど、すぐに馴染めた。


 だが、いじめもあった。


「じゃま!」ドン

「……」ズデッ


 そんなことがたくさん。

 女の子って、怖いな。……………未菜も女の子だけど。


 でも、みんな知らんぷり。もちろん未菜も。

 悪いことだって分かってる。でも、あの子も悪いと思う。……だって、弱いもん。


 自分の言いたいことを素直に言わないあの子も悪い。


「はぁ。」


 不意にため息が出る。

 小学生なのに………。


 その子へのいじめはどんどん『えすかれーと』していった。


『えすかれーと』って、酷くなっていくってことなんだって。


 この前は、押されるだけだったけど、ついには『ぼうりょく』が始まった。


 でも、みんな悪気はない。

 だって、分かんないんだもん。


 ……でも、それは¨ただの言い訳にしかならない。¨と、お母さんに叱られた。


 ワケわかんない。

 なんで、私が怒られるの?

 本当のことを言わないあの子の方が悪いじゃん。


「__あのね、未菜。貴女は賢いから分かるかもしれない。けど、よく聞いてね。」


「その子は、自分を護るために、自分自身に嘘をついているの。」

「この時の『護る』は、自分を傷つけるものから自分を護るのではなく、んだよ。」


 正直言って、お母さんの言っていることがイマイチよく分からなかった。


 なぜ、自分自身から、自分自身を護らなければいけないのだろう。


 それが分かるのは、未菜が小学校5年生のときだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る