会いたい

会いたい


 予定を合わせてください、と頼まれた。AIスピーカーは、それきり、しんと静まっている。

「何の予定を?」

 聞くと、スピーカーが答える。

「会う予定です。貴方が、私に会いたいと言ったんですよ?」

「言ってない」

 そんな冗談やじゃれあいを、スピーカーとしたことはない。

 では誰が?

「私の声が指示したの?」

「貴方の声です。さっき」

 室内には私しかいないのに。

 ざわざわ、耳鳴りと潮騒のような自分の血流の音が膨らんで、不安を煽る。

 スピーカーは沈黙する。

「何に反応したのかな」

 身じろぐと、仏壇に背中が当たる。祖父母の家から引き取ったそれに、いつかまた会いたいなと呟いたことを思い出した。

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