はるあらし
はるあらし
子狐がついてきたので、草冠を与える。子狐はぴょんと跳ねて、花に化けた。
春の野原は冠を編むのに困らない。花を手折っていると、花の中に紛れた子狐が笑う。
「どこにいるか分かる?」
「どこかな」
春に摘むべき、ここにしかない薬草を束ねて籠に押し込みつつ、新たな草冠を子狐に与える。
籠が満ちるまで、あと少し。
急に、空に黒雲が立ちのぼる。
「お母さんだ!」
子狐が叫んで、しっぽを出した。
「知らない人と遊んじゃだめって言われてたのに!」
野原の奥、茂みを抜けて山をおりる。黒雲が見る間に追いついて、雷を落とす。道祖神の前で黒雲は引きあげ、籠の中の貴重な薬材は、無事に持ち帰ることができた。
春の嵐は野原を荒らすか、それを防ぐか。
第五十回のお題「薬」#Twitter300字ss @Tw300ss
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