セスト章

「な、なんだこの子!?いったいどこから...」


「たすけて」


 「たすけて」?たすけてってなんだよ。てかこの声さっき風呂場で聞こえた声だよな。

 なにがどうなってんだよ?


「たすけて」


「ま、まてまて、君いったいどこから入ってきたんだよ!?ドアの鍵かけ忘れたのか?いやいやそうじゃなくて!かけてなかったにしても人んちに勝手に入ってくんなよ!!泥棒か!?泥棒なのか!?なら警察呼んで......」


「うるさい」


「...!」

 少女の一言で我に返った


「そんなことはどうでもいい、とにかくたすけて」


「なんなんだよ君、さっきからたすけてたすけてって...」


「おわれてるの、たすけて」


「なんだおれに言うんだよ!?そーゆーことは警察に言えばいいだろ!?」


「...」


「は!もしかしてこの子が一国の姫でその国を救う過酷でロマンあふれる冒険が始まるとか...」


「...」


「ねーね―君、君はどこから来たんだい?」


「しらない」


「しらない?覚えてないの?」


「しらない」


「えぇ、そんなの助けようがないじゃないか」


「あなたのうりょくしゃでしょ?たすけて」


「能力者でしょって、そんなのこの世界のだれでも使えるだろ...」


「そうなの?」


「?」

 この子は一体何なんだ、しかし俺には今やらねばならないことがある。それは...


「....とりあえず、服着ていい?」


「...」

 少女は小さくうなずいた。




 服を着た後リビングに行くと少女がソファーに座っていた。

 髪は白くて長く腰らへんまである、服も白いワンピースのようなものを着ている。

 俺は少女の前のソファーに座った。


「...」


「...」

 しばらく沈黙が続く、時計の針の音がいつもより大きく聞こえる気がした。


「たすけてくれるの?」

 少女が質問してきた。


「助けるって言ったってなぁ...具体的にどうすればいいんだよ」


「まもって」


「守ってって誰から?」


「へんなひと」


「変な人!?」

 少女を追いかける変な人...ただの変態じゃないか。


「...」


「そーゆーことならやっぱり警察に行った方がいいんじゃないかな?」


「そのけいさつってのものうりょくしゃなの?」


「いやだから、この世界の人ならだれでも使えるの」


「わたしはつかえない」


「え?」

 使えない?どういうことだ?


「君、能力が使えないの?」


「うん」


「そんなことって...」

 ありえない、この世界にいる人間ならだれでも使えるはず...そう『この世界の人間なら』...


「もしかして」


「?」


「君、別の次元から来た人?」


「?」

 うーん、俺の考えすぎか?


 それにしても白いなぁ、肌も髪も服も全部白い。

 唯一胸元のペンダントだけが金色に輝いている。

「そういえばさ」


「?」


「俺が能力者だって誰から聞いたの?」


「しらない」


「はぁ?」


「よくおぼえてない」


「うーん」

 記憶喪失?新手のギャグ?なんでこの家に来たのだろう...俺はこんな子知らないしアナライザーの知り合いか何かかな?


「ふむ、どうしたものか」


「...」

 とりあえず警察にでも行くか?


「.....!」

 少女が勢い良く立ち上がる。


「な、なんだよ急に」


「くる」


「え、」

 少女のその一言と同時に大きな爆発音が夜の街に響き渡った。


「なんだ!?今の爆発!?」


「あいつらがきたの」


「あいつら!?」

 あいつらってなんだ?さっき話してた変な人?


「ね、ねー君あいつらって...」

 質問をしようとした時、再び爆発音が聞こえた。


「な、なんなんだよ!?」

 急いで外に出た。


「あれ」

 しかし周りを見まわしたがあれだけ大きな爆発音が聞こえたにもかかわらず煙や、炎などは上がっていない。

 それどころか街の人たちも全く気付いていないようだ。


「ど、どうなってるんだ?」


「あいつらのしわざ」


「どういうこと?」


「ときがもどったの」


「はぁ?」

 時が戻った?なんだよそれ、時を戻す能力?そんな力、聞いたこともないぞ...


「まもって」


「守ってって...と、とにかく家に入ろう」


「わかった」

 少女はうなずき家に入っていく、いったい何が起きているのだろう...?


「はぁ...」

 小さくため息をつく。


「...」

 少女はただ俺の事を見ながら黙っている。


「とりあえず...今日はもう寝るか」


「...」


「君は、えっとどうしよう」

 うーん、知らない子とはいえ女の子だしなぁ...ここは紳士らしく俺のベットで寝ていいよ(キラ☆

 みたいなこと言ってみるか?


「えっと君...」


「きみじゃない、ロルネ」


「え?」

 少女が反論してきた。


「わたしのなまえはロルネ、ロルネ・ムイセレーバ」


「ロルネ...」

 この子の名前、ムイセレーバって確か...


「ねむい」


「え、あ、えっと俺のベット使っていいよ」


「どこ」


「二階の...いや俺が案内するよ」


「...」

 少女はうなずく。

 てか自由かこの子!「たすけて」の次は「守って」や「ねむい」って...やっぱりどっかの国の王女様なんじゃねーの?

 少女を部屋に送り寝かす、ベットに入るとすぐ眠りについた。

 よほど疲れていたのだろうか?


「...」

 少女を見つめてしばらく立ち尽くす。


「...白い」

 って俺は変態か!確かに白いけどこんなまじまじ見てたら変態と間違われてもおかしくないぞ。


「俺はソファーで寝るか」

 決して広い家ではないのでこの家にはベットは俺の部屋にしかない、もちろん布団もない。

 アナライザーはロボットだけど一応寝る、立ってだけど


「そーいえばアナライザー帰ってこないな」

 ほんとにどこに行ってしまったんだ?


「ま、いずれ帰ってくるだろ」

 俺はそう思い今日のところはひとまず寝ることにした...


—――一晩経過—――



「...きて...」


「ん...?」

 何か声が聞こえる。


「お...きて」

 だんだん大きくなる。


「おきて!!」


「のわぁ!?」

 大きな声に驚き飛び起きる、横に振り向くと昨日の少女がエプロン姿で座っていた。


「な、なんだ君か...脅かすなよ」


「ごはん」


「へ?」


「ごはんできてる」

 ご飯出来てる?何言ってんだこの子...


「はやくきて、さめる」


「お、おう」

 俺はいまいち状況が呑み込めないまま食卓に行く。


「え、これって」

 そこには朝食が並んでいた。


「これ、君が?」


「...」

 少女は小さくうなずく。


「へ、へぇすごいね君、朝食なんて作れ...」

 ってそうじゃない!!なんだこの状況!!!


「えっと君、これはいったい...」


「きみじゃない、ロルネ」

 少女は少し怒った感じで反論する。


「ご、ごめん...えっとロルネちゃん?これはいったいどうゆう状況かな?」


「ちゃんづけ、しないできもい」


「...」

 きもいって...ちょっとひどいんじゃないかね?


「あさごはん」

 少女が答える。


「いや、だからなんで?」


「なんでって?」


「なんで作ってくれたの?」


「おんがえし」


「え?」


「とめてもらったおんがえし」

 意外と律儀だな...


「え、っとじゃあありがとう?」


「どういたしまして」

 少女は無表情のまま答える、俺は席に着き少女は前の席に座った。


「いただきます」


「い、いただきます」

 俺は少女の作った朝ごはんを食べることにした。




END

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