バレットエッジ －パイロット版－

Opening

「僕はパレット」

　少女のような少年が笑顔で言う。

　黒い上下に身を包み、碧眼金髪、両手にナイフを構えている。

「私はバレッタ。さあ、祈りましょう」

　少年のような少女が笑顔で言う。

　黒いドレスに身を包み、碧眼金髪、その手に十字架を握っている。

　二人の視線の先には、両手両足から赤黒い血を流す、巨躯の男が一人倒れている。

「待てお前ら！　俺を殺せば賞金は出ないぞ！？　マジでいいのか！　おい！」

　男の叫びに、少年と少女は一切の心の動きを見せなかった。

「慈悲を」

　少女はなめらかな所作で体を折り曲げると、ふわりと舞った。

　少女の袖から弾丸が三つ、空中へと吐き出される。

「慈悲を」

　少年がくるりと回転し、ナイフの先端で三つの弾丸の雷管を、順に、正確に叩いた。

　男の眉間に一発、心臓に二発の弾丸が撃ち込まれ――男は絶命する。

　賞金首たちのあいだで恐れられている二つの名。

　パレットとバレッタ。

　名前を聞いたら即逃げろ。

　あいつらは、虫も殺せないような顔で、虫を殺すように首を狩る。

　あいつらは、塵ひとつ逃がさず、鏖殺を完了する。