魔法少女(41)

浅井

 いつからだろう。


 学校の無い毎週末、朝早く起きてテレビをかじりついて見なくなったのは。

 毎週のよう地球の平和を守る日本を拠点にしたヒーローや、二人から五人くらいのチームを組んで、隠し持っていた魔法を駆使して地球征服を狙う悪の組織から日本や恋人を守り抜くあどけない少女たちの勇姿を。(今でも毎週末を楽しみにして見て大人もいるけど、とりあえずそれは置いておこう)


 子どもだった僕たちにとってそれは夢のような時間だった。ヒーローモノだったら見たことの無い秘密兵器、カッコいい連携技、巨大なメカなど。魔法少女モノだったら可愛らしいステッキやバトン・コンパクトに、フリフリのプリーツスカートや女の子たちがプリントされたTシャツ、愛くるしい守護獣のぬいぐるみやポシェットだってそう。


 幼き日の僕たち私たちはそれを欲しがったはずだ。


 でも、ある一定の時期がきてそんな夢の世界から醒めてしまう。


 夢見る少年少女でいられるのはほんの一瞬。振り返ってみると胡蝶の夢とでもいうべきなのか。夢のような時間を抜けだして普通の少年少女に戻ってしまう。

 そういったものから卒業して野球やサッカー、ドッジボールや一輪車に興じるはずだ。俺だってそうだった。




―――




 それは大学時代の二日酔いが覚めない土曜朝10時。


 俺は頭の中身をリセットしようとテレビをつけた。やっているのは政治家同士の討論番組だったり、地方の路線で途中下車する旅番組。パチパチと適当にチャンネルを変えていると、魔法少女モノのアニメがやっていた。


 友情・愛情を大いに語り合い、個性豊かな仲間たち結束して悪の組織をバッタバッタとなぎ倒していく。シンプルなストーリーだけど、頭をスッキリさせるにはちょうどいいユルさだった。コップいっぱいの水を呑みながら黙って見ていたんだけど、そんな時にこう思った。


 「魔法少女やヒーローって本当にいるのか?」と。


 その時は頭がリセット出来ていなかったんだろう。純粋に楽しんでいた子どもの頃ならいざしらず、大人になった今ならちょっと考えれば、いや、すぐにでも解るはずだ。




 そんなのものは実在するはず無いってさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る