第44話 遠足 その5
そのお弁当を見たファルアの感想を聞いたマールはドヤ顔になってそのコンセプトを得意げに説明する。
「ふふん、嫌いなもの何ひとつ入ってないんだ」
「偏食はどうだろうね~」
マールの説明を聞いたファルアはニヤリと笑って皮肉っぽく言葉を返す。そう言われて少し恥ずかしくなったのかマールは焦って言い訳をした。
「え、遠足の時くらいいいじゃないの!」
「なおちゃんのはバランス取れてるね」
マールとファルアがお互いのお弁当について仲良く舌戦をやりあっている中、ゆんはなおのお弁当を見てその感想を口にする。
「はい、先生がそう言うの気を使う人なので」
「あ、そっか、なおちゃんって……」
なおは今、引き取られた先の医師のもとで暮らしている。ゆんは彼女の事情を色々察してそれ以上は深く追求しなかった。
お弁当の中身談義が終わってからはみんな普通にお弁当を食べながら他愛もない話で盛り上がりつつ、お弁当タイムは順調に過ぎていく。
青空の下で気の合う友達と話しながら食べる昼食は格別で、みんな笑顔でお弁当を食べ終えたのだった。
「じゃ~ん、それではみなさんお待ちかねのおやつですー!」
お弁当を食べ終えたら次はおやつの時間となる。この時間を一番楽しみにしていたマールは少々大袈裟に持参して来たおやつのアピールをする。
ガサガサと持参した袋から幾つものお菓子を取り出す彼女の姿を見たファルアは呆れ顔で思わず一言こぼした。
「えっと、お弁当食べた後にそのボリュームは……」
「シェアする為に持って来たんだって!みんなで食べよ」
マールは大袋のお菓子を躊躇なく破ってみんなの前に差し出してそれを気前良く勧める。みんなは彼女のその行為に若干引いたものの、せっかくの好意だからとそれぞれ思い思いに手を伸ばした。
「じゃあ、有難く頂きます……」
「遠慮なく食べちゃってよ!まだまだあるよ!」
マールが次々におやつをみんなの前に出すものだから、マール以外のメンバーは自分達の持ってきたおやつを全然食べる事が出来なかった。
そうして楽しい遠足の時間は過ぎていき、やがてお開きの時間を迎える。帰りは遠足お約束の現地解散だった為、マールは普段より早く家に帰宅した。
「で?殆ど持って帰って来ちゃったんだ」
「失敗失敗、テヘヘ……」
結局マールはおやつを持って行き過ぎた為、持ち帰れない大袋のお菓子だけをみんなが食べて個包装のお菓子はみんな持ち帰る羽目になってしまっていた。
そう言う結果になったマールは苦笑いしながら反省していた。ま、買い過ぎたお菓子はその後のマール自身のおやつに変わるだけだし、別に損はしていないんだけどね。
それより遠足が楽しい思い出になって良かったと僕はニコニコ顔で遠足の話をするマールの顔を見て安心したのだった。
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