人生は短編小説をかき集めたようなものだ

もげら

ある日の会話


「ねえ、友達と恋人の境目ってなんだと思う?」


 会話の始まりはこんな言葉から。


「じゃー、恋人と家族の境目は?」


 そんなのわからん。



好きだと告白して、受け入れられて、それで恋人かと言われると

そうではない気もする。


家族もまた然り。

書類を提出すればそれで家族になりきれるのかと言われると

なんだかそうでもない気がしてくる。


「わかんないよね」


 うん、わからん。



——いつからか一人の人を大切に思い、守りたいと思った。


それは友達のように話を聞いて。

恋人のように笑って、想って。

家族のように支えあって。

時に父親のように心配して、守って。


その大切な人の大切なモノも周りの人たちも、全部ひっくるめて大切に、守ろうと思った。

一つでも多く守り、一つでも多く楽しいと思える事を増やそうと。

それが理想だとしても、全ては無理だとしても、

それを叶えるための努力をするんだと。


見返りなんかなくても、その努力は自己満足で構わないと、

嬉しそうな笑顔とありがとうって言葉だけで十分だと、

自己犠牲なんかじゃなく、無償で注いでいいと心の底から思えた。



そんな想いがどこから湧くのか、どの立場から見ているのかはわからないけど。


そこにお互い明確な言葉はなく、それでも確かに絆があった。




——だから、彼女の問いの答えはわからない。



「難しいよねえ」


 うん、本当に難しいよ。



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