No.106 YAMAHA PSR-320
95年発売のホームキーボード。GM規格128音色にMU50基準の8ドラムキットを内蔵。ドラムキットの高音部にはワン・ツー・スリー・フォーなどのボイスが入っているが、トランスポーズ機能がないため実機では弾けない。最大初音数は28音。
デジタルエフェクトが用意されており、Ambient、Ensemble、Ambient+Ensemble、Sustainの4つ。アンビエントはリバーブ風の余韻を残す物で本来のリバーブほど立派な物ではなく小音のリリースが残るくらいの物なので、リリースがある音にはほぼ意味がない。アンサンブルはいわゆるコーラスなのだが結構キツめにかかる。アンビエント+アンサンブルはそのままで2つを同時にかけた物。サスティンも名の通り、ピアノのサスティンペダルを踏んだ状態になるもので、ピアノ以外のオルガンに挙げられる持続音は音が鳴り続ける。というよりサスティンはエフェクターかは微妙なところ。というのもコントロールチェンジのサスティンをオンにするスイッチがこれになっているというだけのようだ。
このAmbientに関して一つ付け加えるならば、ファミコンやゲームボーイなどのPSG3trを使う楽曲に於いて、メロディーラインに奥行きを付けるために、音量を落とした同音を直後に置く事で、リバーブやディレイのような効果を狙う技がある。このAmbientはそれに近いものを感じる。
音に関しては、この時期にしてGrandPiano/BrightPianoが、シンセを先取りして既にMU100/EX5系の物になっていることに驚く。しかし、Electric Grandが前2つのアコースティックピアノの波形を流用していたり、Music BoxはGlockenとVibraphoneを流用してたり、DrawberOrgan/PercussiveOrganはロータリースピーカー風のサウンドであったり、NylonGuiter/SteelGuiterはMU50と同等、XG音源とは決定的な違いがある。ホームキーボードであるためか、ベースや高音を担当する楽器はオクターブの高低が設定されているが、なぜかOverdriveGuiter/SynthBrass1/SquareLeadなどが1オクターブ低くなっているなどの不思議な点がある。
HarpsichordはXG音源系とは若干違うがやはりリアルな物ではない。TremoloStringsはわりかし良い。ChoirAahに至ってはクワイアのはずもシンセボイス風の単音に近い音に変えられている。ShamisenもXG音源系とは全く違う音になっている。ドラムキットはRoomKitのスネアがRocKitを流用しているため、さほど差がない。RockKitやAnalogKitのスネアはXG音源から片方のスネアだけを収録して音程を変えた物を割り当てているため、XG音源とはニュアンスが違う。ClassicKitのスネアは別波形を用意しており、ピッチを感じやすい明るめで硬いスネアが使用されている。ドラムキットを総じて良い点を挙げるならば、オープンリムショットの音はXG音源より良いと思われる。
全体的にXG音源系を元にしているが、GM音源部を完全再現しているわけではなく、割り切った波形内容で128プログラムを作っているせいか、主要的な音以外は非常に微妙な仕上がりになっている。
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