(15)きーこーえーなーい(みづき視点)
私のしもべ、高橋仙太郎はおおむね人の好い男だ。
気は弱いが、その分素直な気性で、いつも穏やかに笑んでいる。
ごくたまに怒ることもあるが、道理は弁えていて我を押し通すことなどまずない。
まずないのだが――
「仙太郎よ、お前、曲がりなりにも大学生であるわけだが、どうなんだ?」
「……どうなんだ、って?」
「世間では学生の就職内定の時期がどうこうなどとそういう話が続いていたりもするようだが、お前自身就職は――」
「きーこーえーなーい」
「……仙太郎?」
「きーこーえーなーい、きーこーえーなーい、きこえませーん」
「ちょ、せんたろ――」
「さぁー明日の朝ごはんの準備でもしようかなぁー! みづきさん白菜の浅漬けとか食べますかぁー?」
「あ、ああ、た、食べるが。その、しゅうしょ――」
「明日の朝ごはんから新米ですよぉー!」
「……」
――就職ネタは禁忌のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます